ツツジ科ツツジ属の常緑低木。更に細かい分類では、ツツジ亜属-ツツジ節-サツキ列というところに位置する。サツキツツジと呼ばれることもある。
ツツジとは近縁というより、そもそもツツジとは特定の種ではなく、ツツジ属全般を指す語であるから、サツキはツツジの1種といったほうが正確であろう。
ふつう4~5月頃に咲くツツジの中では遅咲きで、6月頃に開花する。この時期は旧暦では5月、つまり皐月にあたるため、サツキと呼ばれるようになった。
また、ホトトギスが鳴く頃に咲くため、漢名では「杜鵑花(とけんか)」と呼ぶとされるが、これは正確には誤りで、本来はツツジ全般を指す語である。
ツツジと同様に生け垣や植え込みなどに植栽されることも多いが、盆栽でも根強い人気を持っており、毎年シーズンには各地で盆栽展が開かれる。
漏斗形の花は5枚の花弁があるように見えるが、よく見ると根本でくっついている合弁花である。色は赤、白、紫、ピンクなどがある。
サツキの花は他のツツジと比べてやや小型で、他のツツジでは枝の先に3輪ほどが一度に咲くのに対し、サツキは1輪ずつ順番に咲かせていく。
葉も小さめで、固くてつやがある。多くのツツジは落葉性で、葉は柔らかく、表面に細かい毛が生えるので、サツキと区別できる。
サツキの特徴として、枝変わりと呼ばれる変異現象が挙げられる。これはある枝の先だけで細胞の突然変異が起こり、その枝だけが元の株と異なる形質を示す現象である。
早い話が、赤い一重の花を育てていたはずなのに、一部の枝だけで突然白い花が咲き始めたり、八重咲きになったりなんてことが起こるのである。
他にも、赤花と白花の遺伝子が不完全に混ざることで、絞りや半染めなどの花柄が表れることもあり、こうした枝を挿し木することで、新たな品種として固定できる場合がある。
サツキは枝変わりを起こしやすいため、こうした個性的な園芸品種が数多く存在することも魅力である。
ツツジは古くは万葉集にも歌われる、長い歴史を持つ植物であるが、サツキの起源はそれよりもずっと新しく、江戸時代の寛文から元禄にかけて(1600年代後半)といわれている。
当時の日本は園芸ブームの最中にあり、大昔から観賞用に親しまれてきたツツジも、もちろん盛んに栽培され、品種改良が進んでいった。
当初はツツジとサツキの明確な区別はなかったが、新たな品種が増えていくにつれ、早咲きのものだけをツツジ、遅咲きのものを新たにサツキと呼んで区別するようになった。
元禄5年(1692)、伊藤伊兵衛という人が出版した世界初のツツジ専門書「錦繍枕」は、ツツジの部・サツキの部の二部構成になっており、
ツツジ175品種、サツキ161品種がそれぞれ紹介されている。記録の上では、これがツツジとサツキを明確に区別したはじめての書物といわれている。
明治時代になると、西洋で発展した近代科学の導入により、日本古来の動植物の数々は、分類学の名のもとに再定義されることとなる。
もともと便宜上の呼称に過ぎなかったサツキは、ツツジ科ツツジ属(Rhododendron)の"R. indicum"という野生種の和名として定義されることになった。
近代から現代にかけて作出されたサツキの園芸品種の多くは、この種を交配親としているものと思われるが、その数は膨大であり、
複雑に交配や変異を繰り返しているため、一般的な見分け方ではサツキかツツジか区別がつきにくいものも多い。
園芸における呼称が正確な分類と食い違うのはいつものことなので、毛根を守るためにはあまり考え過ぎないのが良いだろう。
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