ノヴァーリス のバックアップ(No.46)

流れる涙を 時代の風に重ねて
終わらない悲しみを 青い薔薇に変えて

ノヴァーリスはバラの園芸品種で、ドイツのコルデス社より2010年に作出された、いわゆる「青バラ」の一種。
花弁は淡いラベンダー色で、先端の少し尖ったワンポイントがチャーミング。
一般に育てにくいとされる青バラの中では病原虫に強く丈夫なことも特徴である。
ノヴァーリスというと、ドイツ・ロマン主義の詩人が有名。
本名はフリードリヒ・フォン・ハルデンベルク（Friedrich von Hardenberg）
ノヴァーリスは筆名であり、ラテン語で「新たな開拓地」を意味する。
そして彼が未完のまま遺した、最後の小説のタイトルが「青い花」である。

青い花は星の数ほどあれど、不思議なことに、青いバラは自然界には存在しない。
長らく青いバラは世界中の育種家達の悲願であり、同時に叶わぬ夢の象徴でもあった。
そもそも青いバラが存在しないのは、バラが青い色素を作り出す酵素の遺伝子を持っていないという、遺伝的要因によるものである。
そのため通常の交配で純粋な青いバラを作ることは理論上不可能であり、
従来では色素を抜くことで紫や藤色に近い色を作り出すのが限界であった。
しかし、近年のバイオテクノロジーの発達により、遺伝子操作により青いバラを作ることができるのではないか、と研究が始まった。
そして2004年、世界で初めて遺伝子操作により青いバラを生み出すことに成功したのは、
意外にも日本の大手飲料メーカーとして知られる、サントリー株式会社から独立した、サントリーフラワーズである。
サントリーではペチュニアやパンジーから取り出した遺伝子をバラに導入することで、青色色素の発現に成功した。
しかし、現状ではその色は淡い青紫に近く、純粋な青いバラへの道のりは２１世紀の科学技術をもってしても、まだまだ険しいようである。
その一方で、従来の青バラの中にバラ独自の青い色素を持つものがあるということが、サントリーの研究で明らかになった。
叶わぬ夢とばかり思われていた、自然交配による青バラの誕生にも新たな可能性が見え始めたのである。
ノヴァーリス、新たな開拓地、未完の「青い花」――今日も青いバラは、夢への挑戦の象徴なのである。