スズラン のバックアップ(No.2)

この時、太陽は小山を越えて、春の空に高く輝きました。
草に結んだ露は夢からさめ、鈴蘭はいちはやく朝の鐘を鳴らしました。
草も木も太陽の方へあたまをあげて、歓びました。

クサスギカズラ科スズラン属の多年草。小さな釣鐘型の白い花が鈴なりに咲くことからスズランと呼ばれるが、ランの仲間ではない。
大昔はユリ目ユリ科に含まれていたのだが、最近クサスギカズラ目スズラン科として独立した。
最新の分類では、スズラン科はスズラン亜科としてクサスギカズラ科に統合されている。
ちなみにクサスギカズラというのはアスパラガスのことである。臭すぎカツラじゃありません。
日本国内では東北、北海道などの寒冷地に自生し、特に北海道を代表する花でもある。
流通している園芸品種はヨーロッパ原産のドイツスズランであり、国産のスズランと比較すると花や葉が大振りで香りが強い。
日本に比べるとヨーロッパでは人々と馴染み深い花で、春を告げる花、5月を代表する花として古くから親しまれている。
多くの地域でスズランは幸福の象徴とされており、5月になると恋人や親しい人達の間でスズランを贈り合う習慣がある。

「君影草」や「谷間の姫百合」という中々気の効いた別称がある。フムン、谷間の・・・フムン・・・。
前者は花茎が短く、花が葉陰に隠れるように咲くことから。後者はラテン語で「谷の百合」を意味する学名"Convallaria"を訳したもの。
英名でも"lily of the valley"と呼ばれる。ユリと呼ばれているのは前述のとおり、かつてユリ科に分類されていた名残であろう。
"lily of the valley"というと、単に谷間のユリとも解釈できるため、その意味は広く、実際様々なところで使われている。
有名どころではバルザックの小説（原題 "Le Lis Dans La Vallee"）や旧約聖書の「雅歌」、QUEENの楽曲などに同様のフレーズが登場する。
谷間のユリという表現には、いわゆる「高嶺の花」のような、何か副次的なイメージが付き纏っているのかもしれない。
スズランにその名が付けられたのは、単なる偶然なのか、或いは・・・。

さて、ここまでいい話をしてきましたが、スズランには毒があります。
そもそも、大抵の植物は大なり小なり毒を持っているもので、実装済みの花騎士にも有毒であるものは少なくない。
しかし、スズランは別格である。恐らく現時点で実装済みの花騎士の中では唯一、確実に人を殺害するのに十分実用的なレベルの毒を有すると思われる。
スズランの暗黒面は花言葉だけでなく、こうした危険な側面も関係しているのかもしれない。
全草が有毒で、特に花、根、地下茎に多い。コンバラトキシン等の強心配糖体を含んでおり、ジギタリス等に近い強心作用を持つ。
接食した場合、初期症状として嘔吐や眩暈等を催すが、最悪の場合、心筋梗塞に伴う急性心不全から呼吸停止に陥り死に至る。
ネット上での情報では「コンバラトキシンの致死量は0.3mg/kg」と表現しているものが多いが、恐らくこれは誤りである。
これはカエルへの静脈投与による最小致死量LDLoの値であり、致死量といえば普通はマウスやラットに対する経口投与による半数致死量LD50を指標とする。
マウス経口でのコンバラトキシンのLD50は2000mg/kgであり、これはホウ酸や食塩と同程度でほぼ無毒と言えるが、ネコではたったの3mg/kgだったりして、なんだかすごく怪しい。
そもそも、スズランはその他にも複数の毒を持っているし、様々な物質との相互作用なども考慮しなければならないので、
そのひとつであるコンバラトキシンの致死量のみから単純に危険性を論じることはできない。無論これはスズランに限った話ではない。
実際のところ、スズランの誤食による中毒や死亡事故は多々報告されており、スズラン1輪で十分致死量になり得ることは間違いないらしい。
山菜のギョウジャニンニクやオオアマドコロと若芽が似ているため、誤食されることが多いという。スズラン以外にも山菜の誤食は多いので、山菜採りの際は注意。
スズランを活けた花瓶の水を誤飲し死亡したという事例もよく目にするが、一次資料の出典に乏しく、都市伝説の可能性も否定出来ない。
ただし、コンバラトキシンが水溶性であることは事実なので、注意が必要であるということには変わりない。
花瓶の水だけでなく、花粉にも毒があるので、スズランの切り花を食卓に飾っておくことはあまりオススメできない。