シオン のバックアップ(No.35)

シオン（紫苑）は、キク科シオン属の多年草。
別名はオニノシコグサ（鬼の醜草）、ジュウゴヤソウ（十五夜草）。

紫苑の「苑」は「囲いをして植物などを飼う場所」、「寄せ集めや、集団」という意味。
また「祖霊を坐して祈るために作られた草木〔＝艹〕を植えた庭園→祖霊を祀る庭園」が本来の意味という話もある。

本州から九州にかけて分布し、山地のやや湿った所に生息する。
野生のものは稀で、中国山地や九州山地にわずかに生育している。
このため環境省のレッドリスト（2007）では、絶滅危惧II類（VU）に登録されている。
高さは150～200センチにもなり、8月から10月にかけて花径が25ミリから35ミリくらいの淡い紫色の花をつける。

シオン属は、かつてユーラシア大陸と北アメリカ大陸に自生している種（約600種）が含まれていたが、後年の形態学の研究
および1990年代のDNA解析による分子系統学の研究により、北アメリカに自生する種は、他の属に移行された。
現在、およそ180種が、1種を除いて、すべてユーラシア大陸に自生する種に限られる。
なお分類学上の変更に関係なく、園芸上の取引では俗に「アスター」と呼ばれている。
本ゲームではアスターは「キク科エゾギク属」、シオンは「キク科シオン属」として扱われている模様。

栽培の歴史は古く、今昔物語にも登場する。
元々は根を薬用としたが、平安時代には鑑賞用として植えられるようになったという。
強健な植物で環境が合えば、放任とまではいかなくてもさほど手間がかからずによく育つ。
このため観賞するために育てる花、と言うより山野に自生する大型の野菊のイメージが強い。
花壇には別種の北米原産のアメリカシオン（和名：ネバリノギク）がよく利用され、それ以外にも草丈の低いものや、
早咲きのものが知られている。

前述した『今昔物語集』（12世紀に成立）には母の死を悼む兄弟の物語があり、
これがこのゲームにおけるシオンのデザインに大きく関わっている。

兄弟は母の死から墓参りをかかさなかったが、仕事が忙しくなった兄は、
忘れ草（カンゾウ）を墓前に植え、次第に墓参りをしなくなる。
一方、弟は墓前にシオンを植え、雨の日も毎日墓参りを続けていた。
これに感じ入った一匹の鬼は、弟に予知能力を与え、その力のおかげで弟は幸せに暮らしたという。
花言葉の「追憶」「君を忘れない」は、この物語の母を想う弟の気持ちに由来。
この話から鬼の醜草（オニノシコグサ）という別名がついたといわれている。
（醜草の「醜」は強いとか頑丈という意味がある。）

また興味深い一句がある。

“忘れ草、我が下紐に、付けたれど、鬼乃志許草(おにのしこくさ)、言(こと)にしありけり”

小倉百人一首では中納言家持で知られる奈良時代の歌人「大伴家持」が読んだ一句には、
すでに上記で書いた今昔物語の逸話と見られる紫苑の別名が使われている。
それだけ人類とは古来から付き合いが長かった植物ということだろう。

少し話がそれるが、発音が同じことからおそらく鬼乃志許草から鬼の醜草へと変化したのだろうと思われるが、
普通ならこれが使われている和歌では、意味はそのまま紫苑へと繋がるはず・・・なのだが、
なぜか調べると、原文で「鬼乃（之）志許草」と読まれている歌では

醜の醜草　（ものすごく、とんでもなくひどい草）

として解説されている。しかも大抵がドヤァ文章で
どうしてこうなった。

頭に被っているお面は般若面の一種で、大鬼神様と般若を合わせて改良したものが近いとのこと。
この面の意味は五穀豊穣、無病息災、そして怒りと悲しみの感情。つまり裏表の面。まさにシオンの様を表している。(twitterより）