ゴギョウ のバックアップ(No.7)

母子草、すいた人の指にはめた脆い蛋白花(オパアル)、寢室でもつて、月を映してみるつもりか。

ゴギョウ（御形）とは、キク科ハハコグサ属の越年草、ハハコグサ（母子草）の別名である。特に春の七草としてはこの名で呼ばれることが多い。
式神を使役する姿や、NZNの声を担当していそうで（多分）していない声優さんの名前などからも「五行」を連想したくなるところだが、
陰陽道とか何かに関係があるわけでもなさそうなので、恐らく単なる偶然の一致であろう。さらに言えば、本来は「オギョウ」と読むのが正しいのだとか。

4-6月頃、黄色いつぶつぶの花を咲かせる。ひと粒ひと粒は無数の小さな筒状花が集合してできた頭状花序と呼ばれるもので、キク科に典型的な咲き方である。
白い綿毛に覆われた、細長いヘラ状の葉が特徴である。七草の中でも特徴的な外見なので、探しやすいかもしれない。
よく似ている植物として、チチコグサ（父子草）やチチコグサモドキなどが挙げられる。近縁種とはいえ、ドクゼリみたいな例もあるし、食えるかどうかは何とも言えない。

草餅といえば、ヨモギを使うのが現代では一般的であるが、本来はゴギョウを使ったものであったという。
なるほど、つまりゴギョウはヨモギのようなものなのか、というと、そんなことはない。味はほとんどないか、苦い。クセは無いが、うまみや香りも無い。
そして尋常でない繊維質、噛み切れない。七草粥などに使う際は、ゆでた後によく包丁で刻んでおくと良いだろう。
草餅のゴギョウは風味付けのためではなく、綿毛がツナギの役割を持つために使われたと考えられている。
現代と異なり品種改良も進んでいなかったため、もち米だけでは充分な粘り気を得ることが難しかったのである。
「母と子を杵で搗くなんて縁起が悪い」という理由で、ヨモギを使うようになったとも言われるが、それ単純に美味かったからなんじゃないかなぁ。

食材としての価値には疑問が残るものの、ゴギョウの薬効には確かなものがある。ナマのゴギョウには渋みがあるが、これはタンニンを豊富に含むためである。
乾燥した全草は「鼠麹草（そきくそう）」と呼ばれ、昔から喉の痛み、咳や痰などに処方されてきた生薬である。
開花したゴギョウを陰干しにして、適当に刻んで煎じれば、タンニンたっぷり健康ゴギョウ茶の完成。渋みと苦味があるが、キツイものではなく割と飲みやすい。