ヒノキ のバックアップ(No.64)

ひのき、ひのき、まことになれはいきものか　われとはふかきえにしあるらし。
むかしよりいくたびめぐりあひにけん。ひのきよなれはわれをみしらず。

ヒノキ科ヒノキ属の常緑針葉樹。紛うことなき樹木である。
本作のスターティングメンバーの一員でありながら、今なお稀少な「裸子植物」の花騎士である。
2015年10月19日にイチョウが追加されるまでは、ヒノキが唯一無二の裸子植物騎士であった。
さて、この「裸子植物」というそこはかとなくエロい単語は何であるか？中学校の理科を思い出していただきたい。
花というのは受粉を行い、種子を作る器官であるから、当然受粉後に果実や種子へと変化していく部分を備えている。
めしべの根本付近にある、子房（しぼう）と呼ばれるふくらんだ箇所が後に果実となる部分であり、
その内部に包まれている胚珠（はいしゅ）と呼ばれるものが、後に種子となる部分である。
多くの植物はこうした構造の花を持ち、子房が胚珠に被さっていることから「被子植物」と呼ばれる。
ところが、マツ、スギ、ヒノキ、イチョウといった一部の植物の花は子房を持たず、
胚珠が裸でむき出しにされており、こうした植物は「裸子植物」と呼ばれている。
とは言っても、胚珠がどれで子房がどれ、というのは見た目ではやや分かりにくいので、
針葉樹はみんな裸子植物、あとイチョウとソテツも裸子植物、と覚えておけば大体なんとかなる。

ヒノキって花咲くん？と疑問に思った人も多いだろうが、結論から言えば、咲く。
咲かなければヒノキ花粉症なんてものはない。
そもそも花を咲かせないということは、種子を作らないということであり、
胞子などで増えるシダ植物やコケ類、藻類といった植物に限られる。
とは言え、ヒノキはスギやマツと同じく裸子植物に分類されるため、
被子植物のように鮮やかな花弁を持った花は咲かず、一般的な花のイメージとはかけ離れている。
裸子植物の花はむしろシダ植物の胞子葉の特徴を多く残しているため、
やっぱり花と呼ぶのはちょっと違うんじゃないか、という意見もあるぐらいだ。

ヒノキといえばやはり花よりも木として、特に建築材料として馴染み深い。
日本人は有史以前からヒノキを建材として実際利用していた。古事記にもそう書かれている。（※事実です）
明確な物的証拠としては、弥生時代の遺跡にヒノキを用いたものが見つかっており、
世界最古の木造建築である法隆寺をはじめ、ヒノキ造りの歴史的建造物が国内に多数残されている。
ヒノキ材の材料的優位性は、千年の時を生きるこれらの建築物の数々を見て明らかな通りである。
耐久性はもちろんのこと、仕上げの美しさや加工の容易さなど、全てにおいてトップクラス。
また、木材から漂う独特の爽やかな芳香も大きな魅力である。ヒノキのお風呂とか…いいですよね。
ヒノキは千年以上の時を通じて、最高級木材のひとつとして今尚珍重されているのである。

ヒノキ材には独特の芳香がある。これは複数の化合物によるものなのだが、
そのうちのひとつが「ヒノキチオール」。疑うまでもなく、発見したのは日本人である。
他にもショウガオールとかマツタケオールとかヨモギンとかフキノトキシンなんてのもあります。

なお、ヒノキの葉っぱは乾燥させればよく燃える。アウトドアなんかでの燃料には良いかも知れない。
くれぐれも火の取り扱いにはご用心を。