デージー のバックアップ(No.3)

Daisy, Daisy
Give me your answer do!
I'm half crazy all for the love of you!
It won't be a stylish marriage.
I can't afford a carriage.
But you'll look sweet upon the seat
Of a bicycle built for two!

デージーはキク科キク亜科のうちの何種類かの総称だが、狭義では日本でいうヒナギクのことを指す。
そう、キク科であるということは、彼女がゲーム中でおばさん呼ばわりしたヤグルマギクとは同じ科に属しているのだ。
ただし、デージーがキク亜科なのに対してヤグルマギクはアザミ亜科と、ちょっと遠縁であり、
彼女がデージーの叔母さんであるという可能性は少々低そうだ。

その所属国家が示すように、本来は冷涼な気候で育つ花なので、日本で育てる場合だと、たいてい夏の暑さに勝てずに越夏できないため、
秋蒔きの一年草として扱われることが多い。
一方、北海道などの寒冷な地域なら、越夏させて多年草として育てることが可能であり、株分けで繁殖させることもできる。
ヒナギク以外にもデージーの名がついた花はいくつか存在し、グロリオサデージー、ユリオプスデージー、シャスタ・デイジーなどが存在する。
また、ヒナギクのことをコモンデージーと呼ぶこともある。

元々の出身はヨーロッパ。原種は一重咲きの目立たない花で、芝生の雑草扱いされてるのだとか。ひでぇ。
後に八重咲きの系統を中心に多くの園芸種が生み出されて世界に広まり、現在は北アメリカ、アジア、オセアニアなどにも帰化している。
日本には明治初期にやってきており、その姿から小さくてかわいらしい菊と形容され、ヒナギク（雛菊）と名付けられたと言われている。
また、開花した後の花期がかなり長いため、エンメイギク（延命菊）、チョウメイギク（長命菊）、トキシラズ（時知らず）という呼び方も存在する。

花言葉はゲーム中では『無意識』『無邪気』と言っているが、これはそれぞれ赤いデージー、白いデージーの花言葉とされており、
デージー全体の花言葉としては『純潔』『美人』『平和』『希望』などがある。
ただし西洋での花言葉は『innocence』『beauty』となっており、innocenceの和訳には純潔の他に無邪気・天真爛漫なども存在するため、
『無邪気』がデージーの花言葉であるというのもあながち間違いではない。

ところで、この元ネタ解説の一番上の歌詞はイギリスで生まれたポピュラーソング『デイジー・ベル』の一節であり、歌詞の印象的な部分から、
デイジー・デイジー(Daisy, Daisy)、二人乗りの自転車 ((a) Bicycle Built for Two)などとも呼ばれている。
ゲーム中でデージーが多くのセリフで自分の名前を出している元ネタはこのデイジー・デイジーにあるのかもしれない。

実はこの歌、世界で初めてコンピューターが歌った曲なのである。
1961年にアメリカのベル研究所において、ヴォーカルをジョン・ケリーとキャロル・ロックボームが、伴奏をマックス・マシューズがプログラミングして、
トランジスタが用いられた当時の大型汎用コンピュータIBM7094に歌わせたのである。
このエピソードから、1968年のSF映画・小説『2001年宇宙の旅』では、分解され機能を喪失しつつあるコンピュータ
HAL 9000がデイジー・ベルの一部を歌うシーンがある。
この二つのエピソードなどからDaisy Bellは、コンピュータやロボットなどと縁が深い歌という一面を持つようになった。

そして、2000年、日本の楽器業界の盟主、ヤマハがDAISYプロジェクトという名の企画を開始する。
上記のエピソードに由来するそのプロジェクトの目的は『リアルな歌声を合成するためのソフトウェアの開発』。
その結果、開発されたのがVOCALOIDであり、転じて皆さんご存知のバーチャルアイドル達が誕生したのである。
今や日本のサブカルチャーで確たる地位を手に入れた電子の歌姫達の声を聴くときに、寒冷な地からやって来た小さな花と
歌とコンピューターの不思議な関係を思い出してみるのも一興だろう。