大きな つぼみは あす 咲く花か
小さな つぼみは あさって さくか
早く さけさけ しぼりや赤も
ヒルガオ科サツマイモ属のつる性の一年草。ノアサガオなど近縁の別種には多年草もある。
現代人にとっては、学校教材として育てる花として馴染み深い。ロリキャラなのはこのあたりに由縁があるのだろうか?
園芸や花に全く興味が無くても、彼女やヘチマなどは小学校で育てたことがある、という団長は多いことだろう。
そう、プラスチックの鉢に種を植えて、周りを囲むように支柱を立てて、夏休みには鉢を持ち帰って…
しかし、そんな眩しかった夏の日は、もう二度と戻ってこないのです。
名前とヒルガオ科という分類から分かる通り、ヒルガオちゃんとは親戚で、花もよく似ているのだが、
あちらはヒルガオ属に属しているため、意外にも分類上は別属ということになっている。
早朝に開花し、朝のうちに花がしぼむことから「朝顔」の名で呼ばれるが、品種によっては花が長く保つものもある。
花期は夏から秋にかけてで、5枚の花弁がラッパ状にくっついた合弁花を咲かせる。
花の色は赤、青、紫などが主で、遺伝によって決まるが、栽培環境などで変わりやすい。
品種改良により様々な色のものや、絞り、縁取り、斑入りなどの多彩な模様も作られている。
アサガオは奈良時代に中国から日本へやって来た。当時は薬用植物として栽培されていた。
種子は生薬として、かなり強力で即効性の高い下剤、利尿薬として処方された。
一方腹痛、下痢、嘔吐などの副作用も強く、素人判断での処方は極めて危険。くれぐれも種子を食べないこと。
一部の近縁種には強力な幻覚作用を持つものもあり、特に南米原産のソライロアサガオなどは現地の先住民族が幻覚剤として服用していたことが知られている。
奈良時代のアサガオは淡い青色の地味なもののみであった。現在のように色鮮やかな品種が作られたのは江戸時代である。
江戸時代の日本は世界有数の園芸大国でもあった。キクやシャクヤク、ボタンなど、様々な植物の品種改良が盛んに行われていたという。
その中でも特にアサガオは武家のみならず、庶民にも広く愛され、最も著しく発展を遂げる花となった。
色や模様は勿論、八重咲きのものや花弁が分かれるもの、変わった葉をつけるもの、さらに訳の分からない咲き方をするものなどなど、
様々なアサガオが作り出され、世界的に見てもこれほど多様な形態へと発展した植物はそうそうないと言われるほど。
極端な変種の中には種子を残すことができず、一代で途絶えてしまった品種も多いと言われるが、
新政府が樹立し明治時代になってからも、アサガオの花は日本の夏の風物詩として親しまれ続け、
朝顔市や朝顔会といったかつての習慣は、現代に至るまで残されている。
現在でもアサガオの品種改良は盛んであるが、そんな中でも黒色と黄色のアサガオだけは未だに作出されていないという。
記録によれば江戸時代にはどちらの色も存在していたらしく、これらの「幻のアサガオ」の再現を目指して試行錯誤がなされている。
現在最も黒いアサガオは「黒王」、最も黄色いアサガオは「右近」という品種がそれぞれ作出されており、
またサントリー、基礎生物学研究所、鹿児島大学の合同研究では、キンギョソウの遺伝子導入による黄色いアサガオの作出に成功している。
話は変わるが、イギリスのロックバンド、オアシス(Oasis・1991年結成~2009年解散)の有名な楽曲の中に、“Morning Glory”というものがある。
この題名はアサガオの英名であり、邦題もずばり『アサガオ』だったりする。聞いたことない団長諸兄は一度、Youtubeで聞いてみてほしい。
アサガオの種子は薬効があると上記もあるのだが、処方によっては幻覚剤(LSD)としてキマッてしまうのだとか。
この曲の歌詞で頻繁に出てくる単語、“wake up”というのは、
・少年が成長して(大人として)目覚める意味
・オクスリでキマってナニカに目覚める意味
という、2重の意味が込められている……のかもしれない。
ところで、特に早すぎでもなかった日本最古のレディコミこと「源氏物語」。
この中にも朝顔と呼ばれる女性が登場することを、団長諸兄はご存知だろうか?
安心し給え、いい女である。彼女は光源氏のいとこで、加茂神社の斎院、つまり巫女として仕えていた女王であった。
源氏が17年間に渡り熱を上げ続けてきた女性で、正妻の紫の上の立場すら危うくしかけるほどのいい女だったが、
源氏のしっつこい誘いには一切なびかず、断固拒否の姿勢を崩すことはなかった。
とは言え彼女も全く気が無かったわけではなく、源氏には惹かれてもいたし、母からも源氏との婚約を望まれていた。
しかし、彼を取り巻く女達の確執に巻き込まれたり、浮気性の源氏に☓リ捨てられたりするのはたまったもんではないという、
実に懸命で冷静な判断から、たまに手紙で歌をやりとりするだけの清廉で風流な関係を保ってきたという、まったくいい女である。
秋果てて 霧の籬に むすぼほれ
あるかなきかに 移る朝顔
結局彼女は斎院としての奉仕に専念し、生涯独身のまま所帯を持つことなく出家、物語の舞台からひっそりと降りる。
果たしてそれで彼女は本当に幸せだったのか、いっそ源氏の妻となったほうが良かったのか…それはともかく。
そんなやんごとなきいい女なので、団長諸兄はアサガオちゃんにくれぐれも失礼の無いように丁重に持て成し給え。
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