ヒメシャラ のバックアップ(No.76)

祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり。
沙羅雙樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
驕れる人も久しからず、唯春の夜の夢の如し。
猛き者もつひには滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。

ツバキ科ナツツバキ属の落葉高木。
日本特産種で、主に関東より西の太平洋側の山地に分布している。

仏教の聖木であり、平家物語の歌い出しにも現れるサラソウジュ（沙羅双樹）とは、
直接の関係はないが、まったく無関係というわけでもない間柄にある。
サラソウジュはインドから東南アジアにかけて自生するフタバガキ科の樹木だが、
寒さに弱いため、日本では特に温暖な地域でしか育てることができない。
そこで、日本の寺院ではサラソウジュの代わりにナツツバキ（夏椿）を植えるようになり、
ナツツバキのことを「シャラ」「シャラノキ」などと呼ぶようになったのである。
そのシャラノキより一回り小さいものが、ヒメシャラ（姫沙羅）というわけである。

ナツツバキと言う名のとおりツバキに近縁であるが、夏に白い花を咲かせる。
落葉性のため、葉はツバキと違って薄いもので、葉が落ちる前には紅葉もする。
赤褐色の美しい木肌はなめらかでスベスベしており、猿も滑って登れないという意味で
「サルスベリ」とも呼ばれるが、いわゆる「百日紅」と書くサルスベリとは別物である。
木肌の美しさや整った樹形から、シンボルツリーとして庭に植えられることも多い。
ツバキ科なので、例によってチャドクガが発生することがあるが、ツバキやサザンカほどではない。

解説１「鉄扇」
武器は扇子。おそらくは鉄製の扇子である鉄扇。
鉄扇は大きく分けて2種類有り、上記のような鉄製の骨に紙や布を張ったタイプと、複数の鉄板を紐でつなげて扇状にしたもの、がある。
進化後の絵を見る限り、彼女の扇は後者だと思われる。

扇子を武器とする花騎士と言うとゲッカビジンが思い出されるが、こちらは毒使いが毒の粉を散布するための道具でしかないので魔属性である。
（ミモザやローズマリーと同じ錬金術師扱いなのだろう）
一方、ヒメシャラが斬属性なのは創作作品の扇使いに見られる「扇の縁で切る」と言う事だと思われる。

また、扇には寓意として「短刀」の意味がある。
「扇子腹」（扇腹）なる言葉が存在する。聞き慣れないだろうが、これは切腹できない・切腹する短刀さえ持てない武士のことを揶揄する言葉。
さすがに扇子を短刀に模して自害などはできないが、自害した設定にする斬首刑が「切腹」とも言える。
扇子を短刀に見立てる事例は相応に存在するし、軍事的な道具として使われることもある。「軍扇」はその最たるものである。
彼女の立ち振る舞い・美的感覚からして、刀剣そのものよりも扇子の方が「美しい」のだろうか？

と解説になりそうもないことを綴ったが、以下は解説おじさんの主観・先入観が強い解説です。

扇を武器とする物語としては、西遊記の『鉄扇公主』が有名。その影響を受けてか、各種の創作物に登場する女性には、鉄扇で武装させる例が数多見受けられる。
美しい女性が舞う様に戦う姿は絵になると言う事なのだろう。「舞踏×武闘=舞闘術」なんてのは良くあるネタである。
なおこの場合は扇で大風を起こす魔属性か、扇の縁で切り裂く斬属性であり、扇は開いた状態で使用する。

現実でも鉄扇武術は東アジア諸国に散見されるわけだが、日本の鉄扇武術はどうにも胡散臭いものが多い。
帯刀禁止の場所での武家の護身装備と説明する鉄扇解説があるが、ドラマ・小説等で描かれるような、刀身を受け流せるような耐性は、本来鉄扇にはない。
開閉できる鉄扇は構造上モロい為あくまでも気休めレベルであり、逆に開閉不可の鉄扇ともなれば単なる棒でしかない。
そもそもを論ずれば、日本の鉄扇武術は単なる「短棒術」（打属性）であり、態々「鉄扇術」と言い換えている所が胡散臭いの一言。
護身用とするならば、いっそ短棒を隠し持った方が良い（まぁ「扇は正装の一部」と言う事が鉄扇を護身用と主張する理由にされているのだが）。
”フィクションなんだから！”と言われれば致し方ないが、諸武術で鉄扇術を体系に取り込んでいる流派もかなり胡散臭い場合があるのでご注意を。

そういえば、『暴れん坊将軍』が扇を投擲して悪役を怯ます描写があるが、あちらは竹扇なので痛くはない。
劇中でも悪役は怯むだけでダメージはゼロの猫だまし的なものである。
まぁ（空気抵抗的な意味で）開いた扇を遠投する事自体が無理な話だが。逆に重い鉄扇の方が（手裏剣的に考えると）良く飛びそうである