スイートピー のバックアップ(No.72)

心の岸辺に咲いた　赤いスイートピー

とりあえずスイートピーが赤いということだけは知っている、という人は多いと思う。
ところがどっこい、イラストを見てみよう。ピンクである。どう見てもピンクである。本当にありがとうございました。
スイートピーはマメ科レンリソウ属のつる性の一年草。蝶のようなひらひらした花と甘い香りが特徴。
17世紀の終わりにイタリアのシシリー島で発見され、イギリスに持ち帰られるが、しばらくはあまり注目されなかったっぽい。
19世紀末にイギリスのアレクサンドラ王妃がこの花を大層気に入り、式典や晩餐会の飾り付けによく使ったことから人気に火が付く。
それからヨーロッパ各地で品種改良が進み、様々な園芸品種が誕生した。花の色だけでなく、香りも色々楽しめる。
もちろん赤いスイートピーもちゃんとあるので、ごあんしんください。
ちなみに原種は淡い青と赤紫色の花を咲かせ、芳香も強い。そのままでもとても素敵な花である。

"sweet pea"という名前は直訳で「甘いエンドウマメ」の意だが、甘いのはおマメさんではなく、花の香りのことである。
それどころか、種子にはβ-アミノプロピオニトリル(BAPN)という神経毒性を持つアミノ酸が含まれている。
含有量はそれほど多くはないものの、長期間に渡り多食すれば難治性の下半身麻痺や骨格異常を引き起こす危険がある。
カラスノエンドウやグラスピー（ガラスマメ）といったマメ科植物の種子にも、同様の毒性を持つものがある。
クッソ丈夫なこれらの植物はどんな荒地でもわんさか増え、その上種子は栄養豊富という実に魅力的な植物である。
大陸では、干ばつや飢饉が長く続いた際に、しばしばグラスピーが「最終手段」として常食され、多くの中毒者を生み出してきた。
集団中毒の記録は古代ギリシャにまで遡ることができるが、飽食の時代にあって尚、この悲劇は繰り返されている。

余り使われないが、ジャコウエンドウやカオリエンドウといった和名がある。「麝香豌豆」と漢字で書けると何の自慢にもならない。
「麝香」というのは、ジャコウジカという鹿さんの雄が下腹部から分泌する謎の物質を乾燥、精製させた黒色粉末状の物質。
強い甘い香りを持ち、また香水の香りを長持ちさせる効果もあり、古くから高級な香料として珍重されたほか、漢方薬の原料にもなった。
英語では麝香のことを"musk"と呼ぶ。マスクメロンのマスクとはこれのことで、その香りの良さから麝香の名前が付けられた。
つまりジャコウエンドウとは、麝香のような良い香りのするエンドウマメということである。
麝香と名のついた動植物は多いが、花騎士実装済みではカーネーションが「ジャコウナデシコ（麝香撫子）」と呼ばれることがあるそうな。
ちなみに"musk"というのは元々は 【 知らない方がいい 】 という意味の英単語である。
確かに鹿さんの大体そのあたりに謎の物質を蓄える器官が存在するのだが、ソレとは明らかに別物であり、きっちり別でついている。
スイートピーさんの武器が御立派様に見えるとか見えないとか言われているようだが、たぶん偶然である、たぶん。
また、麝香に含まれる芳香成分の名前は 「 ム　ス　コ　ン 」 …頼むから偶然であってくれ。