暗がりに小さな花を半開き
“上手く撮ってね”とねだられるけど
上品な笑顔向けるその姿
貴婦人らしくちょっと気取って
ギンランは山地や丘陵の林下に生えるラン科の多年草である。
学名は『 Cephalanthera(キンラン属) longibracteata(直立した) 』。
日本では北海道から九州と日本各地に自生しており、日本以外では朝鮮半島や台湾などに分布している。
草丈は15~30cm程で、茎の先に白色の可愛らしい花を数個付ける。苞葉のないそれぞれ三枚の咢片と花弁で構成された花は殆ど開かず、
僅かに三裂する唇弁が覗き見られる程度しか開かない。開花時期は4~5月で、開花後に出来る実は蒴果(熟すと下部が裂け種子が散布される果実)である。
つまり進化したギンランは豊かな果実が熟し切ったために、胸甲がパージして中身が飛び出して来たんですね分かります。
そんなギンランの名前の由来は、黄色いランであるキンラン(金蘭)に似ていて、色が白色だった為にそれを銀と見なしてギンラン(銀蘭)になったとされる。
同じキンラン属に同じく花が白いササバギンランがあり、見た目もかなり似ているのだが、ササバギンランの方が草丈が高く、全体的に大型であるため見分ける事は可能。
薄暗い雑木林を歩く足元にそっと咲くギンランを見付けると、気分が和らぐこと請け合いの可愛い花だが、その可愛らしさとは打って変わって栽培は難しい。
ラン科植物の殆どは『ラン菌』と呼ばれる共生菌から栄養を得て暮らしており、これが無ければ遅かれ早かれ枯れてしまう運命にある。
しかもキンラン属は他のラン科植物よりもこの共生菌に対する依存度が高く、栽培が難しい事に拍車をかけている。
また、キンラン属が依存している共生菌が樹木の外生菌根菌であることも栽培が上手くいかない理由の一つとして挙げられる。
通常、ラン科植物の共生菌は腐食菌(落ち葉や枝を腐らせる菌)であるため、ダンボール等の有機物を培養土に混入する事で共生菌の活性化や維持を図れるの
だが、キンラン属が依存している菌根菌は生きた植物の根に共生する菌であり、菌根菌自体が樹木へ依存して生育しているため、菌を維持する為には依存してい
る樹木ごと土壌へと持ち込む必要があるからである。
つまり、キンラン属の植物であるギンランを栽培したいならば、キンラン属が依存している共生菌(イボタケ・ベニタケ等)が共生している相手の樹木(ブナ科・マツ等)
を同時に育てる必要があるのだ。面倒臭い事この上ないが、ギンラン・樹木・菌根菌の三者共生関係を構築せずに栽培すると、失敗する場合が殆どと言っていい。
では、上記の環境を用意出来ないと栽培は無理なのかと言えばそうでもない。
近年、ランの生産業者によってキンランの無菌培養(種子を次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌し、微生物・菌類等を排除した後に栄養成分の入った培地等に無菌的に
種子をまく手法)の苗は共生菌なしでも育つ事が明らかにされたため、同じキンラン属であるギンランも無菌培養の苗であるならば普通に育つ目測が高い。
問題は現時点でギンランの無菌培養の苗を売っている店がないこと(2015年5月現在)。キンランは売ってあるようなので、そちらで来る日に備えて練習しておくのも良いかも知れない。
現在売られているギンラン及びササバギンランのほとんどが山採りのものであり、その性質からまず枯れてしまっていると思われる。
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