セントポーリア のバックアップ(No.11)

イワタバコ科セントポーリア属の多年草の総称であり、年間を通じて花を咲かせる植物である。
欧米では一般に"African violet"と呼んでおり、和名でも「アフリカスミレ」という名が当てられているが、スミレの仲間というわけではない。
青紫色の花弁は下側３枚が大きく、スミレを思わせる。花弁は５枚に見えるが、全て付け根が繋がった合弁花である。葉は肉厚で毛が生える。
別名の通りアフリカの原産であり、分布はケニア南部からタンザニア北部の山地とかなり限られ、その中でも雲霧林と呼ばれる特異な環境を特に好む。
雲霧林は熱帯のごく限られた高度帯に発達する多雨林で、低温高湿のために常に霧で覆われている。そこでセントポーリアは岩肌や苔むした樹上に根を下ろしている。
鬱蒼とした霧深い森の奥、すみれ色の花弁を露に濡らすセントポーリアというのはどこか神秘的ですらある。アフリカを旅する機会があれば是非会ってみたい。
セントポーリアの他にも雲霧林は独特で多様な生態系を有しており、ケツァールとかが飛んでいたり、師匠の仲間とかも生えていたりする。
しかし、農地利用のためにこうした環境は激減しており、こうした諸々の動植物は生息地を追いやられている。セントポーリアも一部の種が絶滅危惧種に指定されている。

1892年、日本では芥川龍之介が生まれ、アメリカではチューブ入りの歯磨き粉が発明されている頃、セントポーリアの種子はアフリカからドイツに渡った。
発見者はヴァルター・フォン・セントポール＝イレール男爵であり、セントポーリアという名は彼の名にちなんでいる。
実はその少し前、何度かイギリスに標本が持ち帰られたことがあったのだが、いずれも標本が不完全だったために新種と認められなかったらしい。
かくしてセントポーリアはドイツの地で品種改良を重ねられ、園芸植物として世界に広まっていった。
アメリカを経由し、日本にやってきたのは明治時代が最初だが、本格的に栽培が始まったのは戦後になってからのことである。
特に故・川上敏子女史が1977年に「流行のセントポーリア」を発刊し、室内栽培法を紹介したことで、国内にセントポーリアブームが巻き起こった。
前述のようにセントポーリアは特殊な環境に自生しており、暑いのも寒いのもダメ、乾燥にも弱く、繊細で育てにくい植物である。
しかしその反面、日光量をあまり必要せず、蛍光灯下でもよく育つ。そのため室内栽培にはうってつけの植物であり、「室内鉢花の女王」とまで呼ばれている。
現在では品種も多く開発されており、四季を通じて様々な彩りをお部屋に添えてくれる花として人気である。
欧米では特に母の日、バレンタイン、イースターの贈り物として、セントポーリアは定番の花のひとつであるという。
少し育てるのが大変だが、その分愛着も湧きやすい。団長諸兄も大切な人への特別な日の贈り物にいかがだろうか。（ダイレクトマーケティング）