キキョウ科キキョウ属の多年草。本種のみでキキョウ属を形成するが、変種や園芸品種は多数ある。
同じキキョウ科にイワギキョウやチシマギキョウなど、キキョウと名がつく草本が幾つかあるが、全て別属である。
原種は秋に青紫色の花を咲かせる。昔から桔梗色といって青紫色を指すぐらい。
花弁の根本が繋がった釣鐘型で、釣鐘の先端が5つに分かれ、特徴的な星形に開花する。
園芸品種では、白や赤の花を咲かせるものや、ツートーンのもの、二重に咲くものなど様々。
開花前のつぼみは花弁が完全に繋がり、ちょうど折り紙の風船のように膨らんでいて可愛らしい。英語では"balloon flower"とも呼ぶそうな。
今ではほとんど使われることがないが「アリノヒフキ」という古い呼び方がある。
アリがキキョウの花弁をかじると、かじった箇所が火を吹いたように赤くなる。故に「蟻の火吹き」。
これはアリの出すギ酸によって、キキョウの花弁に含まれるアントシアニンが変色するためである。
アントシアニンは酸性下で赤、塩基性下で青を呈色する。アントシアニンを含む植物なら似たようなことが可能。
ムラサキキャベツ、ナス、ブドウなどの絞り汁で様々な物質のpHを調べれば、夏休みの自由研究も余裕だ、やったね。
日本人との関わりは長く、古くは「万葉集」でも歌に詠まれている。ちなみにその頃は「あさがほ」と呼ばれていたりする。
大陸では根を生薬や漢方として利用してきた。有効成分はサポニンなどで、鎮咳、去痰、鎮痛などの効果がある。
えぐ味が強くとても飲めたものでないので、カンゾウを加えて「桔梗湯」として飲むと良い。
重篤な副作用としては溶血などが挙げられるため注意。用法用量を守って正しくお使いください。
食用にもなり、若芽をゆでて炒めものや和物にする。韓国では根をキムチなどの漬物にするが、えぐいので要アク抜き。
歴史マニアの団長には「桔梗紋」もお馴染み。明智氏、土岐氏、加藤氏など、多くの家系でキキョウを模した家紋が使われている。
たぶん世界一胡散臭い男有名な陰陽師、安倍晴明が使った五芒星の紋様も桔梗紋のバリエーションとして「晴明桔梗」と呼ぶことがある。
園芸用の品種ならその辺の庭などに普通に植わっているのだが、意外にも野生の原種は個体数が減少しており、絶滅危惧種である。
野生のキキョウちゃんを見つけても、お持ち帰りしたり、食べちゃったりはせずに、なるべくそっとしておいてあげましょう。
|