I'll prank myself with flowers of the prime;
And thus I'll spend away my primrose-time.
プリムラとは、いわゆる西洋サクラソウのこと。春先に咲くため、ラテン語で「最初の」を意味するprimusから命名された。英語では"primrose"
本来プリムラはサクラソウ科サクラソウ属の学名であり、その中には日本のサクラソウやクリンソウなども含まれるのだが、
園芸の世界でプリムラと言った場合、主にヨーロッパ、アジア原産の幾つかの種と、その改良品種群を指すことが多い。
プリムラとサクラソウの関係は、洋ランと東洋ランの関係と似たようなものだと考えてよいだろう。
と言っても流通過程で両者が混同されることもよくあり、サクラソウのことをプリムラと呼んでいたり、
逆にいわゆるプリムラのことをサクラソウと呼んでいることもあるので、あまり難しく考えなくてもいいかもしれない。
品種が非常に多く、花の色や姿形は様々。複数の色が混ざるもの、白い縁取りが現れるもの、バラ咲きと呼ばれる八重のものなどもある。
特によく育てられるのが、イギリスで作出されたプリムラ・ポリアンサ(クリンザクラ)[P. polyantha]と、その交配品種のジュリアン[P.×juliana]、
中国原産のマラコイデス(ケショウザクラ、オトメザクラ)[P. malacoides]やオブコニカ(トキワザクラ) [P. obconica]などである。
種によって差はあるものの寒さにはかなり強い、というよりも霜が降りない限りは少し寒いほうが調子がいい。
日当たりも好むので、冬は基本的に野外プレイで良いだろう。春が近づくと可愛らしい花をポンポンと咲かせてくれる。
夏の暑さと湿気で枯れやすいため、本来は宿根草だが一年草として扱うことも多い。
夏越ししたい場合は風通しのよい日陰に移し、ゆっくり休ませてあげよう。
サクラソウやプリムラの仲間の一部には接触性皮膚炎を起こすものがあり、人によってはウルシ並にかぶれるので、注意が必要である。
特にプリムラ・オブコニカでかぶれる人が多かったが、最近は品種改良が進み、かぶれにくくされているものが多い。
プリムラやサクラソウの仲間は、異型花柱性という面白い性質を持っている。
プリムラは個体によって花の形が異なり、めしべがおしべより長い長花柱花と、おしべがめしべより長い短花柱花に分かれていて、
しかも異なる型の花同士でなければ、受粉できないようになっているのである。
これは自家受粉を防ぐ自家不和合性の発展といえるが、プリムラの場合は更に巧妙な仕掛けで受粉を行っている。
例えば、マルハナバチがプリムラの蜜を吸いに来たとしよう。マルハナバチはストロー状の舌を花の中に差し込み、奥にある蜜を吸う。
もしその花が長花柱花ならば、おしべが花の奥にあるために、マルハナバチの舌の先端に花粉が付着するはずである。
蜜を吸い終えたマルハナバチは次の花へ向かう。それがもし、また長花柱花だったらどうなるか?
長花柱花はめしべが花の入り口にあるが、花粉はマルハナバチの舌の先端に付着している。よってこの場合は受粉が起こらない。
花の奥にめしべがある短花柱花でなければ、うまく受粉ができないようになっているのだ。
逆に、短花柱花の花粉は舌の根本側に付くから、めしべの長い長花柱花でなければ受粉できないのである。
このようにして、プリムラは昆虫を上手く利用し、確実に他家受粉をするための仕組みを確立している。
更に面白いのは、プリムラはこのような性質を持ちながら、完全に自家不和合性ではないということである。
プリムラは稀に、おしべとめしべが同じ長さの等花柱花をつくり、この場合は簡単に自家受粉ができてしまうのである。
このことを最初に発見したのは、あのダーウィンである。ダーウィンといえば進化論が有名であるが、植物にも大きな関心を寄せており、
研究者として一番嬉しかったのは、プリムラの異型花柱性を発見したことだ、と自伝の中で述べているほどである。
英語の慣用句に"primrose path"というものがあり、映画のタイトルなどにもなっている有名なフレーズである。
直訳すれば「プリムラの咲く小径」となろうが、これは享楽的生活の例えである。
初出はシェイクスピア「ハムレット」第一幕第三場でのオフィーリアのセリフから。小言をいう兄レイアーティーズへの返事である。
Do not, as some ungracious pastors do,
(あの罰あたりの牧師さまをまねてはなりませぬ、)
Show me the steep and thorny way to heaven;
(相手には天国にのぼる険しい茨の道を説きながら、)
Whiles, like a puff'd and reckless libertine,
(御自分のほうはいい気なもの、手に負えぬ道楽者同然、)
Himself the primrose path of dalliance treads,
(戯れ心にあちこちと花咲く小道でうつつをぬかしておいでになる。)
And recks not his own rede.
(いつもの御説教はどこへやら。)
また「マクベス」第二幕第三場にも"go the primrose way to the everlasting bonfire"(花咲く道から地獄の業火へ)とある。
戦闘開始時に言う「toi toi toi」はドイツのおまじないで「成功・幸運を祈る」といった意味合いである。
プリムラの語源はラテン語のプリマ(最初)から。バレエが特技なのはプリマ繋がりからだろうか。
スキル名に使われている「ピルエット」もバレエ用語で、「旋回」を意味する最も基本的な回転技である。
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