ジュズダマ のバックアップ(No.10)

ジュズダマの口から度々出ていた『楽園』という単語が、彼女の記憶の鍵である。
太古の時代、集落の近くに大型害虫が居座り、生贄を差し出すことで被害を最小限度に食い止める風習があった。
ジュズダマと集落の子供たちは生贄候補として、大型害虫の餌食になる身だった。
しかし、突如として降り注いだ落雷が、ジュズダマと子供たちもろとも大型害虫へ命中したことから彼女運命が大きく変化してゆく。

大型害虫を滅した雷から子供たちを庇ったジュズダマには『超回復能力（たとえ七十の致命傷を負っても瞬時に傷ひとつなく再生できるほどの性能＆他者にも同様の効果を与えることも可能）』が備わり、『奇跡の子』と称される。
雷を放ったのは害虫フラスベルグと後に知っても尚、『カミナリ様』としてジュズダマは崇拝を始めた。
（900年前のスプリングガーデンにはまだ花騎士も少なく、害虫への防衛策も乏しかったとはいえ、ジュズダマの集落を大人も花騎士も救ってくれなかったという事実も重なったことから、と云えよう）

やがてその崇拝は、ジュズダマを中心に徐々に世界へと伝播してゆき、多くの人が彼女の元へ集い始める。
そして誕生したのが、国家規模の超巨大コミュニティこと害虫崇拝集団『楽園』であった。
ジュズダマの口からも「当時は（リリィウッドに）多くの『楽園』の人々が住んでいた」という旨の発言をしている。

だが、崇拝対象がアレなだけあって、他の国家では危険思想として警戒されていた。
その警戒度は当時の各国が『有事の際には排除も辞さない』という同盟を組むほどのレベル。
900年前のスプリングガーデンやべぇな？

しかし、『楽園』はいつしか歴史上から姿を消す。
その原因は、害虫フラスベルグへ会いにゆくため、リリィウッドからベルガモットバレーへジュズダマたちが大移動を開始したためだった。
先述通り、害虫の脅威が桁違いだった900年前の世界で、国家間の大規模行軍など無謀の極みであり、彼女も「殆どがリリィウッドから出ることなく脱落していった」と語っている。

これが原因で、その特殊能力故に自死も出来ずに絶望したジュズダマは、自らの記憶の消去と封印を大精霊へ願い、900年間眠り続けていたわけである。

なお、この『楽園』事件を顧みたリリィウッドが創設したのがフォレステマ神殿だったりする。

ジュズダマは東南アジアを原産とする、イネ科ジュズダマ属の多年草である。
日本各地の水辺をはじめとする湿地や河川付近または田畑に自生し、大きいもので1.5ｍ以上にもなる大型植物。
その花は夏の8～9月にかけて、茎先から特徴的な花を咲かせる。
（袋状の葉の基部から壺状の花が咲く）
丸みを帯びた光沢のある実が、この植物の名の由来にもなっている。
ジュズダマの根や茎葉又は果実は、古来より漢方薬として煎じて用いられた。
このことが、彼女の持つ特殊能力の由来と思われる。