ユリ のバックアップ(No.1)

ユリ科ユリ属の多年草の総称で、北半球の亜熱帯～亜寒帯に広く分布している。
多くは森林や草原に自生し、夏に特徴的なラッパ型の花を咲かせる。
優美な反りを持つ６枚の花弁は内側３枚と外側３枚に分けられるが、外側３枚は実はがくが成長したものである。
このように花弁とがくの見分けがつかないものをまとめて花被片と呼び、ユリ科やヒガンバナ科の植物に典型的な特徴である。
地中に球根をつくるが、正確には鱗状になった葉が重なった鱗茎と呼ばれるものであり、要するにタマネギである。

実は「ユリ」という単独の種は存在せず、あくまでこれは属名の総称なのだが
一方ではこのゲーム内でヤマユリ、オトメユリ、ヒメユリ、カサブランカと
ユリ属の代表的な種が何種類も実装されている。
同じようなパターンに、ノヴァーリスやブラックバッカラが実装された後に
バラという属名の総称の花騎士が実装された例があり、今回も同じようなケースと思われる。

ちなみに、クロユリはユリと名前が付いてはいるが、こちらはバイモ属で上記のユリ類とは系統が違う種である。
他のユリ属たちがバナナオーシャン所属なのに対して、クロユリだけがリリィウッド所属なのも、
この系統の違いが影響しているのかもしれない。
その他にユリ属に含まれない「ユリ」にはナルコユリ、ウバユリ、チゴユリなどがある。あと変化球でウミユリとか。

西洋では古くから、白いユリが「純潔」の象徴とされ、古代ギリシアでは既に栽培されていたとされる。
中世になると白いユリを「マドンナ・リリー」と呼んで聖母マリアと関連付けられるようになる。
実際にはこのマドンナ・リリーは栽培が難しく、教会の行事のために各地の修道院で細々と栽培されるのみで
一般に観賞用として広く栽培されるようになったのは、19世紀以降と比較的最近のことである。

19世紀にユリの栽培について転機が訪れたのは、実は日本の開国が原因である。
開国とともに数多く訪れた欧米の植物学者やプラントハンターたちが、日本のヤマユリやカノコユリを本国に送ると
その美しさに大きな衝撃を受けて紹介された、という記録が多く残っているという。
中でもテッポウユリは栽培の難しいマドンナ・リリーに急速に取って代わり、キリスト教会の行事に
無くてはならない花として、日本から欧米に大量の球根が輸出されるようになっていった。
これは第二次大戦が始まるまで、日本の主要な輸出品の１つに「ユリ球根」が数えられていたほどである。

また、明治6年のウィーン万博に日本のユリが出品されたことでその人気は決定的となり、
その後欧米の園芸家たちが、日本のユリを元にした品種改良をこぞって行うようになっていった。
戦後になって栽培技術やバイオテクノロジーが進歩すると、品種改良の勢いは一層強くなり、
一世を風靡したオリエンタル・リリーの最高傑作「カサブランカ」を始め、日本のユリを親に持つ園芸品種が
数多く作られ、それぞれ人気を博している。

一方、日本では万葉集の古くからユリの花は広く親しまれており、その名残は
美人を形容する慣用句「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉にも現れているが
（この言葉通りにSDキャラがそれぞれ実装されているのは、団長各位もご存知の通りかと）
実はユリは江戸時代頃までは、観賞用よりもむしろ球根を食用・薬用として利用することの方が多かったのである。

上記の慣用句も、一般的には
「芍薬はスラリと伸びた立ち姿、牡丹は横に枝分かれした座り姿、百合は風に吹かれて揺れる歩き姿が美しい」
と解されているが、これは本来は漢方薬の処方を表した言葉だ、という説もあるぐらいで、そこでは

• 芍薬：イライラして気が立った女性に鎮痛薬・筋肉をほぐす薬として使う
• 牡丹：腹部の血流が悪くて立ち上がれず、座ってばかりいるような女性に使う
• 百合：ユラユラと元気なく歩きまわる女性に、消炎・鎮静薬、精神安定剤として使う

という意味なのだと説明されている。

ユリの球根の中でも、灰汁が少なく食用に適しているのはオニユリ・コオニユリ・ヤマユリのもので、
現在栽培されているもののほとんどが、コオニユリを交配親とした「白銀」という栽培品種である。
これらは現在でも茶碗蒸しや郷土料理などに使われることがあるので、食べたことがある団長も多いだろうか。
ユリ根の栽培には４～６年という長い時間がかかり、しかも同じ畑で連作できないため、
結構な高級食材ではあるが、漢方薬にも使われるというだけあって栄養価は高く、カリウムなどが豊富である。

また西洋の軍記物に詳しい団長やボーイスカウトの経験がある団長の中には、
「フルール・ド・リス(fleur-de-lis)」という紋章に馴染みがあるかもしれない。
この子の帽子にもこの紋章があしらわれており、進化後の姿ではマントの右肩部分にも見ることができる。
これは花を意匠化した紋章で、名前を直訳するとフランス語で「ユリの花」という意味である。
フランク王国のクロヴィス１世が王家の紋章として採用して以来、フランスの歴代君主はそれぞれ
紋章にこの意匠を取り入れるようになった、と言われている。
この意匠は後にブルボン家と関係がある欧州の各王家でも使われるようになり、欧米の各国で今でも使われることが多い。
更に現代では前述のようにボーイスカウト各団体のシンボルとしても使われることが多くあるが、
大元のフランスでは、現在は大統領が統治する共和政を敷いているため、
王政の象徴であるフルール・ド・リスは国旗や国の紋章などには採用していない。

ただしこの「フルール・ド・リス」、名前こそ「ユリの花」となっているが、実はモチーフになった花は
ユリではなくアヤメ（アイリス）だと言われている。
前述のクロヴィス１世がゴート人との戦争中に窮地に陥った際、ライン川のほとりにアイリスの花を見て
浅瀬の場所を知り、危うく全滅を免れた、という伝説が元になっているのである。
そして時代が下って、後のルイ７世もこのアイリスを紋章にして十字軍に参加したため、この紋章が
「フルール・ド・ルイ」（ルイ王の花）と呼ばれるようになった。
これがやがて、「フルール・ド・リス」に変化して現在に至るわけであるが、
なぜアヤメの花のデザインがユリと混同されたのかは、ハッキリした理由は分かっていない。
おそらく、中世ごろにマドンナ・リリーが聖母マリアと関連付けられた頃、王家の紋章であるこの意匠も
また聖母の純潔と関連付けられて語られるようになったため、この花の意匠自体をユリの花と呼ぶようになった、
といった流れではないだろうか。

話は変わるが、「百合」と言えば女性同士の絡みを指す隠語としても有名であるが、
この語源は、ユリの花や花言葉などには全く関係がない。
これは、ある特殊な趣味をお持ちの方々が愛読する雑誌「薔薇族」の読者コーナーで
女性同士の体験談を告白する、という趣旨の企画が立ち上がった際に、当時の編集長である伊藤文學氏が
「薔薇が男性同士なら、それに対して百合というのはどうだろうか」というような流れで付けたコーナー名「百合族」が
やがて一般にも広まったものである。
※「薔薇族」の方にはそれなりにきちんとした由来があるのだが、これについては
バラのページの小ネタに詳しく載っているので、興味のある方はのぞいてみてはいかがだろうか。