この道はいつか來た道、 ああ、さうだよ、 あかしやの花が咲いてる。
北原白秋「この道」 より
ハリエンジュ 学名 Robinia pseudoacacia 別名 ニセアカシア pseudoacacia【pseudo‐】ラテン語で 「擬似」という意味。直訳すると「擬似のアカシア属」となる。 参考リンク「おもしろ言語」(章)学名って何?(項目)長々し名
ハリエンジュはマメ科マメ亜科ハリエンジュ属の落葉高木で、初夏に良い香りの白い花を房状に垂れ下がるようにして咲かせます。
ハリエンジュは漢字で「針槐」と書き、葉の付け根にある一対の棘(托葉が変化したもの)が由来となっています。
原産は、北アメリカ。 1873年に渡来した外来植物です。外来生物法で要注意外来生物に指定されています。 一般社団法人 日本養蜂協会のメンバーから要注意外来生物リストから除外する運動が起こっていました。ハチミツ絡みでの利害が合った為だといいます。
正式な和名はハリエンジュですが、一般的には「ニセアカシア」と呼ばれることが多いです。
この名前は種小名のpseudoacacia("pseudo"はラテン語で擬似という意味。直訳すると「擬似のアカシア」)をそのまま和訳したもので、
当初日本ではこのハリエンジュがそのままアカシアとして流通したのですが、
その後本物のアカシア(ネムノキ亜科アカシア属)が日本に輸入された際、同じ名前では混乱を招くということで贋アカシアと呼ばれるようになったと言われています。
本来のアカシアはアカシア属全般を指す言葉で、特にフサアカシア(ミモザ)やギンヨウアカシアが園芸用としてよく知られていますが、
これらのアカシアとニセアカシアはそんなに、というかぶっちゃけ全然似ていません。違うところより似ているところを探すほうが大変かも。
一方英語では"locust tree", "black locust"などと呼ばれます。locustとはイナゴのこと、つまり「イナゴの木」というわけ。
何故そんなことになったかというと、本来"locust tree"とはイナゴマメという木のこと。果実は食用になり、キャロブ(calob)と呼ばれています。
地中海沿岸から中東にかけての地域では古代から食用とされていて、マタイによる福音書の
「ヨハネは、らくだの毛衣を着、腰に革の帯を締め、いなごと野蜜を食べ物としていた」という記述における「いなご」も、イナゴマメのことだと言われています。
イエスズ会の宣教師がハリエンジュのことを、ヨハネの食べたイナゴマメと勘違いしたために"locust tree"と呼ばれるようになったそうです。
ハリエンジュは日本ではアカシアに間違われ、欧米ではイナゴマメに間違われる、という奇妙な木なのです。
ハリエンジュは根っこから芽を出す性質があり、一度植えると木を伐採した後でも、根さえ残っていれば何度でも復帰するという特徴があります。何度でも蘇るさ!
またマメ科植物全般に言えることですが、空気中の窒素を肥料分として土中に固定する能力を持つため、どんなに痩せた土地でもぐんぐん育つことができます。
その為、日本では緑化や砂防に利用されていましたが、現在ではその性質から生態系を壊す外来種として認識されるようになってしまいました。
因みに、そのような経歴からか、ハリエンジュはハゲシバリと呼ばれることもあります。(´・ω・`)また髪の話してる…
ただ、ハリエンジュの花から採れる蜜は長らく「アカシア蜂蜜」と呼ばれ有名な蜂蜜となっています。
また、ハリエンジュの花は食用としても有名で、ハリエンジュの花の天ぷらなどもあります。
ただしそれ以外の部分は有毒なので、間違っても新芽などは食べないよう。他にも、ハリエンジュの花をホワイトリカーに漬けた「アカシア酒」は有名なお酒の一つでもあります。
更にハリエンジュの材は腐りにくく、船材や木炭などに長らく使用されていたこともあり、日本ではハリエンジュ=アカシアとして浸透しています。
そのため、日本ではいくつかアカシアの木に関しての歌や小説などがありますが、それに出てくるアカシアは全てこのハリエンジュなのです。 (上に紹介している北原白秋の童謡のアカシアも実際にはハリエンジュである。)
また、札幌にあるアカシア並木と呼ばれる並木道も実際にはこのハリエンジュが使用されています。
参考書籍「樋口康夫『花ことば:起原と歴史を探る』」
参考書籍「ヴィジュアル版 植物ラテン語事典」ロレイン ハリソン
参考リンク「ギリシャ神話と花言葉
参考リンク「花咲マニアとアロマさん」
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