オオイヌノフグリ(Veronica persica)はオオバコ科クワガタソウ属の越年草で、早春の道端でごく普通に見られる雑草である。
学名にあるとおり、ベロニカさんの同属に当たる。
草丈は10~20cm、葉は1~2cmの卵円形で鋸歯があり、秋のうちに繁茂して越冬するが、なにぶん地味なのでほとんど意識されることはない。
早春に数mmサイズの花を多数咲かせる。非常に小さい花だが、
その鮮やかな瑠璃色は目に映え、初めてそこにオオイヌノフグリが存在することに気がつくのが往々。
花を拡大して見ると、どこかネモフィラと似た印象を受けるが、体系的には全く無関係で、
ネモフィラの花弁が5枚なのに対し、オオイヌノフグリの花弁は4枚と異なっている。
ただし、ネモフィラの和名ルリカラクサ(瑠璃唐草)はオオイヌノフグリの別名でもあり、素人が拡大写真で見せられると混同してしまう程度には似ている。
春の終わりには枯れてしまい、夏は種で過ごし、秋に再び繁茂する。繁殖力は強めで、雑草が生える土地ならだいたいどこでも見られる。
名前にあるフグリとは言わずもがな、男性の陰嚢のことで、
つまり「大犬の陰嚢」という何とも卑猥なイメージの名前である。なぜ別名で実装しなかった…?
なまじ当たり前に見られる花なので、子供に名前の由来を訊かれると、なかなか答えづらい罪作りな花である……。
この名前の由来は、果実の形が雄犬の陰嚢に似ているためといわれているが、厳密にはやや異なる。
実は、犬の陰嚢に似ているのは近縁種のイヌノフグリの果実であって、
オオイヌノフグリはイヌノフグリに草形が似ていて、より大きな草という意味で名付けられたもので、
オオイヌノフグリの果実はハート型であり、陰嚢には似ていない。つまり、風評被害である。
子供に説明するときは、「他人を名前でいじっちゃいけません」的な教訓も交えて説明するといいかもしれない。
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