スイギョク のバックアップ(No.73)

スイギョク(Eichhornia crassipes)は南アメリカ原産、ミズアオイ科ホテイアオイ属のホテイアオイの名で知られる多年生水生植物。
名前に聞き覚えのない団長でも「水槽に浮かんでる丸っこいアレ」と言われればピンとくるのではなかろうか。
他にホテイソウやウォーターヒヤシンスなどの別名もある。
ちなみに翠玉は鉱物のエメラルドで、こっちのスイギョクは水玉。
そのままミズタマと呼ばれることも。

日本には明治時代に観賞用に持ち込まれ、メダカ飼育の水草の定番と言われるほど人気がある。
葵に似た丸くつやつやした葉をもち、丸く膨らんだ葉柄で水面に浮いて漂う。
この葉柄を七福神である布袋さんのお腹に見立てたのがホテイの由来のようだ。
泥に根を張れる浅さの場合葉柄はしぼんで、草丈1.5mにまで背を伸ばすこともある。
水中ではヒゲ根や茎を伸ばしながら子株を増やしている。
わさわさに茂った根っこは、金魚・メダカ等の食料や、産卵場所としても珍重される。

開花期は主に夏で、10cmほどの花茎に淡い藤色の花を咲かせる。
六枚ある花弁のうち上を向いた大きな一枚は、中心部分にかけて色を濃くし、その中に黄色いスポットがある。
この青い花の美しさから園芸用として世界中に広まり、
各地で大暴れして青い悪魔と呼ばれることになる。

彼女の脅威は恐るべき繁殖力にある。
ミントやランタナのように現地勢を駆逐しつつとにかく増えまくるのだが、水上に浮いているので水運の邪魔をする。
川や池沼を覆い尽くすと水中の酸素を奪い尽くしたり水路を詰まらせたりするし、ダムに詰まれば水力発電も止めてしまう。
寒さに弱いので冬には葉を枯らすが、腐敗して水を汚す上に根茎が残れば翌年には復活する。
暖かい地域では年中通してすくすくと育つため、まるで手がつけられない。
先述のように金魚・メダカ等の飼育に伴って栽培されることが多いため、
余分に増えすぎてしまった個体がリリースされ、野生化するというケースが後を絶たない。
もし団長諸兄が増えすぎたスイギョクにお困りの場合、絶対に河川や湖沼等への放流はせず、
可哀想かもしれないが、生ごみとして適切に処分すること。

僅か4ヶ月で6株が4,000株に増えた事例もある。
この繁殖力を以って、九州＋四国よりも広大なヴィクトリア湖(68,800km²)に流れ着いたホテイアオイが、
僅か数年の内に水面を覆い尽くしたという。
アレロパシー作用等を通じて水生生物全体へ影響するおそれがあり、マラリア等のウィルスを媒介する蚊の繁殖地にもなる。
このように環境に対して絶大な影響を与えるため、世界の侵略的外来種ワースト100に指定されている。
なお数パターンある「世界十大害草」や「世界三大害草」にも決まって名を連ねており、知名度の高さが窺える。

一応、水質浄化能力の高さや紙の原料・家畜の飼料に使えたりと有用な面もある。
最近は乾燥させた繊維を編みあげて籠や椅子など家具を作るといった利用法も出てきている。
ちなみに原産地の南アメリカで増え過ぎないのは、カピバラさんが片っ端から食べているかららしい。

ほのぼのして見えるが、野に青い悪魔を放ってはいけない。メダカの水草をそこらに流さないように注意しよう。
（画像：blog.wildlife-pictures-online.com/large-mammals/hippo-draped-in-water-hyacinth より拝借）