ヘンルーダ のバックアップ(No.31)

There's rue for you; and here's some for me:
we may call it herb-grace o' Sundays
O you must wear your rue with a difference.
あなたにはヘンルーダ、これは私にも取っておかないと。
この子は「安息日の恵みのハーブ」って呼ばれてるのよ
ああ、 でもあなたにとっては違う意味でお付けにならないと、だけど
――「ハムレット」（シェイクスピア） 第4幕第5場より

学名：Ruta graveolens
英名：Rue （Common Rue）
ミカン科ヘンルーダ属の常緑低木。地中海沿岸地方原産。
日本ではいまいちだが、欧米、特に英国では非常にメジャーな植物であり、ミカン科の学名RutaceaはRuta科、つまりヘンルーダ科の意である。
学名のGraveolensは「強く香る」の意で、その名の通り独特の芳香がある。
なお、ヘンルーダという名前はオランダ語名wijnruitが訛ったもの。
背が低く、丸みのあるかわいらしい葉が広がるようにつく。初夏～夏ごろに控えめな黄色い花を咲かせる。
寒さと高温多湿にやや弱いが、生命力は旺盛で栽培は容易。

古くはネリウム（キョウチクトウ）などと調合して毒、特に蛇毒によく効くとされた。
古代ローマ時代になると通経薬（堕胎薬）として一般化する。
料理の香りづけのために利用されることもあったが、大変苦いのと毒性のため、使用するとしても少量、現代ではあまり使われていない。

抽出成分に複数のアルカロイド系毒を含む。
ベルガモットなどビターオレンジ系同様に塗布・あるいは接食後に紫外線を受けると激しい炎症を引き起こす、いわゆる光毒性（フクロマリン由来）のほか、
紫外線関係なく皮膚や粘膜をただれさせる毒性（シオネール由来）も持ち、
いずれも多量に摂取した場合に激しい腹痛や嘔吐を引き起こし、最悪の場合死に至る危険性がある。
これらによって、現代でも精油（アロマオイル）として使用する場合に禁忌あるいは重大な注意事項となっている。
弱い人だと折り痕の樹液等でもかぶれるため、栽培時にも注意が必要。

ミカン科の芳香成分を猫が苦手とするため一部に「ネコ除け」として知られている。
花騎士の彼女の「ネコに嫌われる」設定はこれが由来だろう。ネコと和解せよ
まあ実際効果はあるのだが、一株程度ならその木だけよけちゃって終わりなわけで、それこそ生垣とか一面に植わってるのでもない限りは大した効果は期待できない。

また、江戸時代に渡来した際には虫よけ・虫退治の効果があるとして精油成分を「芸香（うんこう）」と称して
書物の虫よけに利用していた（書斎を「芸室（うんしつ）」と呼ぶ）。
が、本場であるはずの海外でそのような用例は見られず、実際の効果は怪しい。
一部の蜂・蝶には非常に強い誘引効果があるため、まったく逆効果だったのではないだろうか？
「匂いが強い＝何か効果があるに違いない」という無邪気な思い込みの産物だろう。