クモマグサ のバックアップ(No.30)

ユキノシタ科ユキノシタ属の多年草。高山植物の一種で、雲間に隠れるほどの高山に自生することから「雲間草」と呼ばれる。高いところ大好きなのも納得。
標準和名として正式にクモマグサと呼ばれるのは、チシマクモマグサ(Saxifraga merkii)の変種であるS. merkii var.idsuroeiと呼ばれるものである。
これは北アルプスの白馬岳と御嶽山にのみ分布するという激レア種で、長野県のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されている。
その稀少性に加えて、栽培方法もまったく確立されていないことから、下界でお目にかかれる機会はまず無いと思って良いだろう。
夏に上記の山々へ登る機会があれば、岩場をよく観察してみよう。運が良ければ、岩の切れ目から小さな白い花がひっそりと顔を出しているのを見つけられるかもしれない。
オタマジャクシのような特徴的な形の花弁を持っているので、見分けるのは難しくないだろう。

一般にクモマグサの名前で流通するのは、ヨーロッパ原産のS. rosaceaを元に作出された園芸品種であり、特に区別する場合はセイヨウクモマグサ、洋種クモマグサなどと呼ぶ。
イラストの背景に描かれている花はこちらで、日本のクモマグサとは見た目も大きく異なっている。
淡い赤紫～白の丸い花弁５枚からなる小さな花は、ウメにも似た雰囲気。株全体がこんもりとした丸っこい姿になるのがなんとも可愛らしい。
昔から盛んに品種改良が行われてきた種のため、高山植物の中では比較的丈夫で、管理は優しいほう。といっても、あくまで「高山植物としては」の話。
やはり夏場の高温多湿には弱く、暖地で夏を越えさせるには何らかの対策が必須となる。