迷信の一つだよ。『真夏生まれの魔女は、マグルと結婚する』、
『朝に呪えば、夕べには解ける』、
『ニワトコの杖、永久に不幸』。
……聞いたことがあるはずだ。僕のママなんか、迷信どっさりさ。
エルダーフラワーはレンプクソウ科ニワトコ属の低木。旧分類ではスイカズラ科に含む。
ニワトコ属(Sambucus)の植物の別名である。
温帯を中心として世界中に25種ほどが生息しており、日本にもニワトコとソクズの2種が生育している。
エルダーは"elder"と綴るが、「年長者、老人」を意味する英語の"elder"とは同綴同音異義語である。
語源はアングロサクソン語で「炎」を意味する"oeld(エルド)"が由来。焚き木の素材に使われることも多かったからだとか。
なので決して某B○Sの高位の階級の役職名でもないし、別に【巨躯】とも書いたりしない。
生薬として人気なものはニワトコ(庭常)。ニワトコ属の学名:Sambucus sieboldiana var. pinnatisectaの物を指す。
2~6m程の高さになる低木で、古木になるとコルク質のひび割れた樹皮を纏う。
日本では西日本を中心に生育し、温暖な気候を好む。
英語ではニワトコ属を広く指して単に「エルダー」と呼び、特にヨーロッパ原産のセイヨウニワトコ(Sambucus nigra)を指す場合が多い。
エルダーフラワーというと正確にはそれらの花を指す語で、特にハーブとして利用する場合によく使われる名称である。
5-6月ごろに白い小さな花をぶわぶわと大量に咲かせているのを収穫する。利用法は様々だが、コーディアルと呼ばれるシロップにするのが定番である。
マスカットのような独特の風味があり、炭酸割りにすれば初夏の陽気にピッタリの爽やかなドリンクになる。
効能としては、風邪やアレルギーの諸症状に効果があり、主に喉や鼻の症状を抑える。更に発汗、利尿の作用があり、毒素の排出を促すことができる。
シロップで有名なフランスの「モナン」の製品が日本でも売っているので、興味のある人は実際に飲んでみてはいかがだろうか。
スパークリングワインで割って飲むのも通な楽しみ方である。
薬効があるのは花だけではなく、「エルダーベリー」と呼ばれる実もビタミンなどの栄養を豊富に含んでおり、美容や風邪の予防に効果的である。
身近でよく効く薬草として、大昔から様々な場所で薬の材料や民間療法に使われおり、「田舎の薬棚」なんて呼び方もされていた。
古代エジプトには「ニワトコ入りの牛乳は糖尿病に効く」と書かれたパピルスも残されている程。
東洋でも葉を煎じて飲む湯薬や入浴剤の原料の他、魔除け飾りとしてヒイラギやニンニク、モモなどと並んで用いられてきた。
別名の一つである「接骨木」も、木を煎じて作ったペーストを骨折の治療のために用いていたというエピソードから来ている。
アジアでは魔除けの木のイメージが強いが、海外ではどちらかというとネガティブな伝承の多い木でもある。
「イエス・キリストを裏切ったユダが自責の念から首吊り自殺した木がニワトコ」という話を始め、魔女や悪魔絡みの話が多かったりする。
これだけ多くの伝承が残されていることからも、ニワトコが人々の生活に深く関わってきた木であることが窺えよう。
|