初々しさ 瑞々しさ
その命の 儚ささえ 胸に抱く 初恋草
レシュノルティア属はオーストラリア西南部原産、クサトベラ科の常緑低木で、青、空色、白、黄色、オレンジ、ピンクなど豊富な花色がある。
パステル調の可愛らしい花がたくさん咲き、その姿は「まるで蝶の群れが舞うよう」だとも称される。
日本の植物学の分野では、Lechenaultia のラテン語読み「レケナウルティア」と表記されるが、原産地オーストラリアでの発音は
「レシュノルティア」となるため、後述の輸入園芸業者もこちらの表記を取っており、本作でもそれにならったものと思われる。
主な種にはおおまかに分けて
- 「フォルモサ種」ピンク、オレンジ、黄色などで、匍匐性でこんもりとした姿のもの
- 「ビローバ種」青、白、空色などで、こんもりとせず上に立ち上がった姿のもの
があり、このうちビローバ種の方は、日本に本格的に導入した園芸業者が花言葉より命名した「初恋草」の商品名で花屋によく出回っている。
このレシュノルティア、名前の由来は1800-1804年にオーストラリアを踏査したフランスの植物学者レシュノー(Leschenault de la Tour)にちなんだもので
本来ならこちらの名前の綴りにも s が入るべきところを、最初に属名を登録したロバート・ブラウンがスペルミスしたまま発表してしまったためにこのような形になってしまったもの。
蛇足・ロバート・ブラウンって誰?
ロバート・ブラウンは19世紀のイギリスの植物学者だが、植物学者としての業績よりもむしろ「ブラウン運動」の発見者として、物理学の世界で有名である。
これは流体中の微粒子が不規則な運動をするというもので、彼は花粉の観察中に、破裂した花粉から流出した微粒子が、水面で不規則に運動することを発見した。
ブラウンはこの運動を、花粉が生命を持っていることの証拠であると考えたが、彼の没後、熱運動する分子の衝突による物理的な現象であると明らかにされた。
このことを発見したのが、他でもない20世紀最大の天才物理学者、アルベルト・アインシュタイン博士である。
この発見により、それまで理論上の存在であった原子や分子の存在が実験的に証明されることとなり、物理学は重要な一歩を進めたのである。
19世紀の植物学者の些細な発見がなければ、物理学は数十年遅れていたのかもしれない。まぁアインシュタインなら自力でなんとかしそうだけど。
更に蛇足だが、ロバート・ブラウンという国産ウィスキーの銘柄が存在する。「スコットランドによくある人名」を元にしたネーミングだそうで、多分完全に無関係である。
日本には1970年代に一度入ってきていたようだが、その当時はあまり栽培方法もよく分かっておらず、市場にも定着しなかったそうで
1990年代に前述の園芸業者が、花言葉にちなんだ「初恋草」のネーミングで売りだしてから、冬の花の定番として人気が急上昇したようである。
日本での歴史が浅い割には数多くの交配種が作られており、バラエティ豊かで華やかな品種名で、それぞれ人気になっている。
ちなみに、本作で彼女が自己紹介の中で語っている『バイオレット・レナ』も実は日本で作られた交配品種のうちの1つで、
フォルモサ種「スターブラスター」にビローバ種「スカイブルー」を交配して育成されたもの。
咲き始めは鮮やかな赤紫色で、徐々にスミレ色から青紫色に変わって行くそうである。
作中の彼女は『私の髪の色から~』と語っているが、髪色はすみれ色と言うには少々淡すぎるように見えるのもご愛嬌、ではあろう。
西オーストラリアは世界三大ワイルドフラワー・エリアのうちの1つで、レシュノルティアはオーストラリア・ワイルドフラワーの代表格でもある。
ちなみに、その他の三大ワイルドフラワーは南米アタカマ砂漠と南アフリカ・ナマクワランドと言われている(諸説あり)。
元は砂漠地帯に自生している花なので、乾燥には強いが実は暑さにはあまり耐性がなく、日本で育てる際には夏越しが課題とされる。
花言葉の「淡い初恋」はおそらく、パステル調で可愛らしい花がたくさん咲く様子から来ていると思われるが
実はこの花、乾燥地帯に咲く花のためか葉はやや肉厚の多肉性で、花びらをめくると内側にはびっしりと白い毛が生えている。
作中での彼女が妙に厚着でロング丈のスカートを身につけてガードの堅い服装をしているのも、実は剛毛の処理跡を見られたくな(以下自主規制
なお余談だが、レシュノルティアの花弁は本当は5枚、うち2枚はやや退化しており小さく目立たない形で、3枚の大きな花びらを持つのが特徴である。
イラストではどうみても4枚花弁に見えてしまうのだが、もしかすると運営の担当者が絵師さんにデザイン発注した時の見本写真の映りが悪くて
絵師さんには(もしかすると担当者にも)4枚花弁に見えてしまっていたのかもしれない。
※園芸屋さんの写真では、綺麗に見せるために前述の退化した2枚の花びらを後ろ側に回して、3枚花弁の側からアップで撮るようなアングルが多いので
向こう側にボケて写る小さい2枚の花びらが、くっついて1枚のように見えることがよくあるため。(ネットで画像検索するとそういう写真が結構ヒットする)
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