オーストラリアの東部及び南東部(ブリスベンやメルボルン周辺)に
生息する、カンガルーやウォンバットと同じ、有袋類である。
樹上生活に適した手足を持ち、鋭い5本の爪で木の枝をしっかりと掴む。
しかしその鋭い爪に反して、生態は実にのんびり屋。
一日の3/4を樹上で寝るか休んでおり、早朝や夕方だけが活動時間帯。
しかし運動オンチというワケではなく、数m程の樹から樹への
飛び移りをしたという報告もあるらしい。移動力630は伊達じゃないので。
コアラの食べ物⇒ユーカリの葉と思われがちで、概ねその通りだが、
アカシアなど、ユーカリ以外も食べ、一日の摂食量は凡そ0.5~1kg程。
尚、オーストラリアには500種類以上のユーカリ種があるが、全てが
コアラの食用に適しているわけではなく、食用なのは数十種くらい。
コアラはその食用に適したユーカリ種やアカシア等から更に数種を選び、
しかもその新芽しか食べないという、こだわり派の生物。
因みに、上述ののんびり屋には理由がある。
ユーカリは栄養分に乏しい上に、繊維質でタンニンや油分が多く、消化に悪い。
更にユーカリには毒があるので、普通の方法で消化吸収することはできない。
そのこでコアラは、胃で消化しきれなかった食物を2mにも及ぶ長い盲腸に溜め込み、
腸内に住まうバクテリアの力を借りて、ゆっくりと分解や無毒化を行うのである。
また、長時間に及ぶ消化と解毒には膨大なエネルギーが必要となるため、
コアラはユーカリから得られる僅かなエネルギーの大部分を食事に費やし、
それ以外の時間はほとんど寝て過ごすことで、エネルギーを節約している。
コアラがほとんど動かないのは、この先生きのこるための戦略に他ならないのだ。
そもそも、何故コアラがユーカリなんてものをわざわざ主食とし、
このような効率的とは言いがたい食生活を送っているのかといえば、
コアラはハッキリ言って弱かったので、自然界の厳しい生存競争を
勝ち抜くことができなかったのである。そこでコアラは、誰も食べようとしない
硬くて不味いユーカリをあえて主食とすることで、不利な餌の奪い合いを避けようとした。
その結果、コアラは消化器官を独自に進化させるという荒業を成し遂げ、
ユーカリ食というユニークな生態を獲得し、環境に適応したのである。
専門的な言葉を用いれば、コアラはユーカリ食というニッチを独占した、ということである。
こうしたコアラとユーカリの奇妙な関係は、極めて特殊化した進化の袋小路と言えるだろう。
それでは、生存競争から解放されたコアラは平穏無事の毎日を送っているかといえば、
そう上手い話でもなく、近年、一部のユーカリが有袋類に対する強力な毒素を
作り出すようになっているという報告がある。ユーカリの反撃が始まったのだ。
これに対しても、コアラは早くも解毒能力を獲得しつつあるらしいが・・・
今日もコアラとユーカリは、生き残りをかけた苛烈な争いをのんびりと繰り広げている。
蛇足だが、オーストラリアでは観光記念にコアラを抱いて写真を取る事が
(少なくとも10数年前は)出来た。ただし既に述べたとおり、
「人間の活動時間≠コアラの活動時間」ではないので、間近で見るとその顔は
『進化後の某イベントキャラ』のように不機嫌そう。
某お菓子メーカーのチョコレート菓子のように、可愛らしい姿を期待すると、
ションボリするかもしれない。ちなみに、さわり心地は意外と剛毛。
団長諸君がオーストラリアに遠征に行く事があったら、
この事を頭の片隅にでも置いておいて欲しい。
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