リトープス のバックアップ(No.30)

リトープス(Lithops)はハマミズナ科リトープス属の多肉植物の総称。
メセン(女仙)類とも呼ばれる多肉植物で、非常に特徴的な見た目をしている。
まず葉の色が緑以外にも茶、白、赤など本当に植物なのかを疑いたくなるようなものがある。
その葉の形も特徴的で、割れ目の入った石のようにも見える独特の形状をしている。
学名の「Lithops」は「lithos(石ころ)」と「opsisu(似る)」で、石ころに似た見た目をしていることに由来する。
和名もイシコロギクと、その特徴的な葉から命名されている。
花は和名の通りキクに似た花を咲かせる。

リトープスを特徴づけるこの形状は乾燥地帯の強烈な日光や乾燥から生長点を守るため。
植物の成長の起点となる生長点は一般的に茎や幹、枝の先端に存在する。
リトープスは二枚の葉を肥大化させ、生長点を葉の間に埋もれさせることで保護している。
新しい葉や茎を形成する生長点が埋もれてしまっているため後述の脱皮を行う。
二枚しかない葉で光合成をおこなうためリトープスは驚くべき構造をしている。
リトープスの上部の色が側面と異なる部分は光を取り入れる「窓」となっており、
内部も透明な組織で満たされている。透明な組織を覆う表皮の内側は濃い緑色となっており
そこで光合成を行う。表皮の外側だけでなく内側でも光合成を行うことで
光合成量を増やしている。YouTubeでLithops exで検索するとこの解説を実物付きで見られる。

女仙という呼び名は棘があり雄々しさを感じさせる仙人掌に対して、表面に多様な模様があり、つるりとした見た目から「女性的な仙人掌」という意味でつけられた。
リトープスに近い生体を持つコノフィツム（こちらはいくらか植物らしい外見）も女仙に分類される。
他にも象の鼻、豚の鼻などの呼び名があるがこれは肥大化した2つの葉の見た目からだと思われる。
オトモの動物が象や豚なのもここから取っているのだろう。

見た目以外の特徴として脱皮するというものがあり、外気や砂などから耐えるために使っていた古い葉の水分を新しい葉に移し、乾燥した古い葉が剥がれることで脱皮する。
脱皮を行うのは元の生息環境がほとんど雨の降らない乾燥地帯で、古い葉で内側を守りながら新しい葉を用意しておき、雨が降ったときに古い葉を退けて成長するという独特な生態のため。
なおこの脱皮、見る人とリトープスの種類によってはグロいと感じる人もいるので画像検索には注意。

『生きた宝石』と称される特徴的な姿と生態に魅せられたマニアも数多く存在する。
栽培する際は通気性の良い多肉植物用の培土を使うのが良いだろう、
そして置き場と水やりのタイミングを知ることが重要で、夏場（6~9月）には一切水をやってはいけない。
この時期はリトープスにとって休眠時期であり、水をやってしまうと最悪の場合一晩で根が腐り、本体が溶けるように崩れ落ちることさえある。
また乾燥地帯の植物だが極端な高温には弱いため、夏場には暑すぎず、陽の当たりすぎない場所へ置く。
秋になると成長を始めるため、日当たりの良い所へ移し、一週間に一度程度水やりを行う。
脱皮を行う時期（冬~春）にも水をやってはいけない（死にはしないが一度に二回脱皮して小さくなってしまう『二重脱皮』を起こす）。
脱皮をほぼ終えたら再び成長期なので水やりを再開し、夏が来たら再び水を切る……というサイクル。
植え替えは成長期である春か秋に行い、その際は根が非常に細いため取り扱いに注意すること。
植え替えをサボると養分不足か脱皮の度に小さくなってしまうので、年に一度は土を変えてやった方が良いだろう。
なお繁殖については二年に一度ほど、脱皮の際に分裂する。
花が咲いた後に種が採れるため、難易度は高めだが実生での繁殖も可能である。