ツユクサ のバックアップ(No.13)

朝(あした)咲き　夕べは消(け)ぬる　月草の
　　　　　　消ぬべき恋も　我(あ)れはするかも(作者不詳)
ツユクサ科ツユクサ属。6～9月頃、空き地や道端に青い花を咲かせる一年草。
３枚の花弁をもち、上側２枚が鮮やかな青で、下側の１枚は白くて小さいのであまり目立たない。稀に白花が見られることもある。
アサガオのように朝に咲いた花はその日の昼前にはしぼんでしまい、それが朝露のようであることから「露草」の名が付けられたと言われている（他にも諸説あり）。
古くから日本人に親しまれてきた花であり、万葉集にも「月草」（着草）の名で度々詠まれている。
花の儚さに反して草自体は丈夫であり、日当たりのあるやや湿った場所であれば簡単に群生することができ、分布も広いので、特に注意しなくてもそこかしこで見かけるだろう。
除草剤が効きにくい雑草として有名で、厄介がられることも多い。病弱設定とは一体・・・。
また単子葉植物の代表として中学理科の教材としてもよく用いられるので、名前に聞き覚えがあった団長も多いはずである。
ありふれた花ではあるが、よく見れば美しい花なので、たまにはじっくり眺めてみるのもいいかもしれない。

花の絞り汁は古くから青色の染料として用いられ、この淡い青色を縹（はなだ）、もしくは露草色、月草色などと呼んだ。
花の儚さに似て、この染料はとても退色しやすいため、色落ちしにくい藍染めの普及とともに廃れていったが、
この性質を逆に利用し、友禅などの染め物の下絵を描くために使われるようになり、その手法は現在でも受け継がれている。
薬用・食用にもなり、開花期に全草を採取し、水洗い後乾燥させたものを生薬名で鴨跖草（オウセキソウ）と呼ぶ。効能は解熱・利尿・下痢止めなど。
食用としては、開花直前のものが柔らかく食べやすい。アクがないので軽く湯がいておひたし、和物などでいただける。

似ている仲間でムラサキツユクサもよく見られるが、こちらは同科ムラサキツユクサ属に分類される多年草で、カナダ南部からアルゼンチン北部を原産とする外来種である。
よく見るとムラサキツユクサの花弁は全て同じ色、同じ大きさであり、葉も丸みのあるツユクサと比べて細長いため、全くの別物と分かるであろう。
ツユクサおよびムラサキツユクサは、中学理科で学習する気孔の顕微鏡観察の実験材料としてお馴染みである。
多くの団長がツユクサさんの孔が開閉する様を顕微鏡でまじまじと観察し、余すところ無く克明にスケッチした経験を持っているはずである。
この実験にツユクサが使われるのは、入手性の高さと、細胞の層を簡単にぺろりと剥がすことができて、観察がしやすいから。
顕微鏡観察といえばオオカナダモが定番だが、水草であるオオカナダモは気孔を持たないため、気孔の観察は行えないのである。
ガラスビーズのような小さなガラス球をレンズにすれば、１００倍ほどの簡易顕微鏡が作れるし、同様の原理の「スマホ顕微鏡」なるものも市販されているので、
休日に大人の自由研究と洒落こんで、ツユクサさんの孔をじっくりと観察してみるのはいかがだろうか。