リュウゼツラン のバックアップ(No.100)

やあ （´・ω・｀)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いてほしい。

というわけで、リュウゼツランに纏わるお酒、テキーラについてもう少し詳しく見てみよう。
テキーラはメキシコ生まれのゴキゲンな蒸留酒である。アミーゴ！
メキシコのハリスコ州にあるサンティアゴ・デ・テキーラという町が発祥であり、町の名前からテキーラと呼ばれている。
テキーラの起源は16世紀ごろ、新大陸の覇権を目論むスペインのコンキスタドールが、現地に持ち込んだ蒸留技術により誕生したといわれている。
モノにもよるが、クセのある独特の苦味や青臭さが特徴で、ただでさえ人を選ぶ蒸留酒の中でも、好みがハッキリしやすいお酒といえるだろう。
ライムをかじり、塩を舐めながらストレートのテキーラを煽る「シューター」と呼ばれるスタイルが、本格的な飲み方とされるが、
マルガリータやテキーラ・サンライズなどのカクテルの材料となったり、宴会芸に使える「ショットガン」といった面白い飲み方なども存在する。

テキーラについて説明する前に、先にテキーラより古いリュウゼツラン由来のお酒について説明しておいたほうがいいだろう。
リュウゼツランは数十年に一度の、そして二度目は決して無い開花の時期が迫ると、
それまでせっせと光合成をして蓄えたデンプンを糖化させ、極めて糖度の高い液体を作り出す。
そこで、ちょっと可哀想な気もするが、開花直前のリュウゼツランの花茎を折ってやると、甘いシロップが溢れ出す。
日本でも、クヌギなどの樹の幹に傷がつくとそこから樹液が漏れ、これを吸いに虫達が集まってくるが、
リュウゼツランの樹液はそれとは比べ物にならないほど甘いのだ。人間が甘味料として楽しめるほどに。
アガベシロップと呼ばれるこの液体は、原産地メキシコでは実に有史以前から利用されている、伝統的な甘味料である。
日本でも輸入食材を扱っているスーパーなどで結構よく売っていたりする。

そして、このシロップを発酵させて作ったお酒を「プルケ(pulque)」という。
テキーラと違い、プルケが日本で流通することはまず無いといってよく、恐らくほとんどの団長には馴染みのないお酒であろうが、
ひと昔前にネットで話題となった『謎の白い液体』というのが、ほかならぬこのプルケのことである。
メキシコでは1000年以上前から飲まれ続けているとされる伝統的なお酒であり、アステカ文明においては神に捧げる神聖な酒でもあった。
日本のどぶろくや韓国のマッコリと似ており、乳酸発酵に特有の甘酸っぱさがある。とてもクセが強いため、ジュースなどで割って飲むことも一般的である。
そんなプルケがメキシコ国外ではあまり知られていない理由は、見た目日持ちせず輸出が難しいためであろう。
プルケは加熱殺菌、いわゆる火入れを行わない生酒なので、生きたままの酵母が元気に発酵し続けており、
時間が経つと酵母に糖分が食い尽くされてやたら辛くなるし、雑菌が繁殖して腐ってしまう可能性も高くなるのである。
まさにメキシコでしか飲めない地酒中の地酒なので、リュウゼツランの謎の白い液体を飲みたいのであれば、原産地へ赴くしかないであろう。
どちらかというと庶民向けの安酒なので、観光客向けの店ではなく、プルケリアと呼ばれるプルケ専門の立ち飲み屋を探すのが良いそうだ。
最近では缶飲料形態も出てきているようだが、風味においては…である。

リュウゼツランと関連の強い女神マヤウェルであるが、あくまでも原材料としての神であり、加工されたプルケの女神ではない。
お酒や酩酊は旦那のパテカトルや子供のセンツォントトチティン（オメトチトリ、マクイルトチトリ等）の領分である。
スペイン支配以前のプルケは、もっぱら神職や生贄がの祭祀のときに飲むものであり、平民は高齢者・妊婦の苦しみを和らげる薬として利用していたが、
スペイン入植以降は身分を問わない飲み物へと世俗化していった。

テキーラ(Tequila)は、プルケとは全く違う手順で作る蒸留酒である。
葉に隠れて見えないリュウゼツランの太く短い幹には、せっせとそれまで光合成したデンプン質が蓄えられている。
発芽から20～30年待ち、育った幹（パイナップルに似た、ボール状の形をしている）を刈り取り、蒸し焼きにしてデンプンを糖化させ、その絞り汁を発酵・蒸留したものが「メスカル(Mezcal)」というお酒になる。
はて、テキーラはどこへ行ったのやらというと、ウィスキーの中にバーボンがあるように、テキーラは本来メスカルの一種であり、
メキシコ政府の公認機関であるテキーラ規制委員会(CRT)の定める原料・製法・産地を満たす一部のメスカルだけが、テキーラを名乗ることが許されるのである。
曰く、主原料とするリュウゼツランはAgave tequilana var.azul、通称「ブルー・アガベ」のみとし、またその割合は総原料のうち51%以上でなければならない。
ブルー・アガベはハリスコ州、グアナファート州、ナヤリ州、ミチョアカン州で生産されたものを使用、更にテキーラ村とその周辺地域で蒸留されなければならない。
蒸留回数は最低でも２回（一般的なメスカルでは１回だけ）。加水後の最終的なアルコール度数は35-55%の間とする…などなど。
もちろん、テキーラ村の外でメスカルを作っている対抗心あふれる蒸留所も精進を重ね、今ではテキーラに負けないほどの評価を得ている。
遠くないうちに、テキーラ以外のメスカルも市場に上ってくることだろう。

余談ながら、テキーラの中にも幾つかのグレードが存在している。
まず、原材料にすべてリュウゼツラン由来の糖分を使用した100%アガベ(100% de Agave)と、
廃糖蜜などの副材料を基準値内で混ぜたミクスト(mixtos)に二分できる。
当然ながら、100%アガベのほうが良質なテキーラとされる。
100%アガベのテキーラは更に、ラムのように熟成期間によって数段階に分けられる。

• ブランコ(Blanco)、またはシルバー：貯蔵を行わないもの。無色透明。
• レポサド(Reposdo)：２ヶ月から１年未満の樽熟成を経たもの。
• アネホ(Añejo)：１年以上熟成させたもの。樽のサイズは600L以下。
• エクストラ・アネホ(Extra Añejo)：３年以上熟成させたもの。樽のサイズは以下同文。

若いテキーラはパンチの効いた荒々しい味わいだが、樽熟成を経たテキーラはウィスキーのように琥珀色を帯び、味わいも深みを増し円熟したものとなる。
ひとくちにテキーラといっても色々なので、苦手だと思っている団長も、色々冒険してみると思いがけぬ運命の出会いがあるかもしれない。
…それでは、注文を聞こうか。