アジサイ のバックアップ(No.65)

紫陽花や 一ふさ垂るゝ 手水鉢

日本の梅雨を彩る花としておなじみのアジサイは、アジサイ科アジサイ属の落葉低木である。「紫陽花」や「八仙花」とも書く。
同じくアジサイ科アジサイ属のクレナイとの関係は複雑、というよりCP論争で外野が勝手に騒いでややこしくしていると言ったほうが適切か。
アジサイ属の総称として呼ぶこともあるが、最も狭義にはHydrangea macrophylla一種を指し、区別のためにホンアジサイと呼ぶこともある。
H. macrophyllaは日本に自生するガクアジサイ[H. macrophylla f.normalis]の変種とされているが、
人為的に作出された園芸品種とも、自然発生した野生種とも言われており、出自ははっきりしていない。

ドーム型に多数の花を密生させる姿で知られるが、これらは正確には花ではなく、がくが発達したものである。
真の花はドームをかき分けた内側にあり、非常に小さいが5枚の花弁を持つ花が咲いていることが分かる。
アジサイはこれら2種類の形態の異なる花を持っており、前者を装飾花、後者を両性花と呼んで区別している。
装飾花が外側を完全に覆っているものを「手まり咲き」、周辺部のみが装飾花になるものを「がく咲き」と呼び、
ガクアジサイやヤマアジサイといった野生のアジサイは基本的にがく咲きであり、手まり咲きをするのは園芸用に改良された品種が多い。
中には装飾花を持たず、すべて両性花からなるコアジサイのような種も存在している。
アジサイは花を大きく目立たせ花粉媒介昆虫を誘引する装飾花と、生殖を行う両性花とで役割分担しているとされ、
一般に花弁よりもがくの方が組織が丈夫なので、色や形を長期間に渡って保つことができるという利点がある。
装飾花の中央には小さなつぼみがあるが、花としての機能は退化しており、花期のほとんどを未開花のまま過ごす。
花期の終わりに装飾花が開花することがあるが、稔性は低いかほとんど無いとされ、役割を終えるとそのまま散っていく。

アジサイの花言葉に「移り気」や「冷淡」といったものがあるのは
「七変化」とも呼ばれるように、アジサイの花の色が変わりやすいということに由来する。
「土壌が酸性だと青、アルカリ性だと赤になる」という話が有名だが、
実際には色々な要因が複雑に関わっているので、本当にふとした隙に変わってしまうことも。
長雨が続きジメジメする梅雨の花という側面からか、あまり好ましくないイメージと結びつくこともあるようで、
かつて花柳の世界では、情夫（イロ）を次々と取っ替え引っ替えする女性を「アジサイ」の隠語で呼んだそうな。
団長諸兄も移り気な彼女に振り回されないよう、気をつけよう。
隠語といえば、「紫陽花」を音読みすると「しようか」となるので…ナニをしようって言うんですかね、ご想像にお任せします。
中々風流な言葉遊びなのだが、所詮言ってることがアレなので、変な誘い方してローキックを食らっても責任は取りません。
一方でたくさんの花をたわわに咲かせることから、一家団欒や子孫繁栄のシンボルでもある。お盛んなことですね。
商売繁盛などの意味もあり、金沢などの商家ではアジサイの花房を軒先に吊るすという習慣がある。
雨の中じっと耐え忍ぶように咲く姿は「忍耐」「辛抱強さ」などと結び付けられることも多い。

アジサイの一部の種は有毒であり、誤食による中毒事故が度々報告されている。症状は嘔吐、めまいなど。
毒性物質は明らかにされておらず、どれほどの毒性を持つのかもよく分かっていない。
青酸配糖体（胃酸と反応しシアン化水素、いわゆる青酸を生じる）の一種とも言われているが、詳細は不明。
料理の飾り付けに使ったアジサイの葉を食べてしまい、中毒を起こすという事故も何件か起きている。
団長諸兄もうっかり食べてしまわないように、くれぐれも気をつけよう。