ライオンゴロシ のバックアップ(No.61)

ライオンゴロシ
学名 Harpagophytum procumbens

科目 シソ目ゴマ科ハルパゴフィツム（ハルパゴフィタム）属 Lamiales Pedaliaceae Harpagophytum
英名：devil's claw、grapple plant　別名：デビルズ・クロー

ライオンゴロシは、南アフリカのカラハリ砂漠を中心に広い範囲に自生するゴマ科の多年草である。
花言葉は異例の「なし」…と言っても「花騎士としては異例」というだけで、花言葉のない植物なんてのはいくらでもある。
地を這うように成長し、夏に咲く筒状の花は内側が黄、外側がピンク。その愛らしい姿からはライオンゴロシ、あるいは英名の"devil's claw"などの呼称は想像もつかないであろう。

この植物がライオンゴロシと呼ばれる由縁は、その特徴的な果実にある。最大で直径12cmにもなる巨大な果実からは、先端に鋭い鉤爪の付いた硬いトゲが、四方八方に突き出しているのである。
要は超スゴイくっつき虫なのだが、その異様は確かにライオンゴロシの名にも恥じぬ、凶悪な印象を与える。というかどう見ても凶器です。
尚、ライオンゴロシの属するゴマ科には、ツノゴマやウンカリーナ（別名：シャンプーの木）など、
長大なトゲを果実に持つ種が他にも幾つか存在し、これらもライオンゴロシやデビルズクローの名で呼ばれることがあるようだ。
特にウンカリーナは危険であり、一見するとライオンゴロシより大人しそうにも思えるが、その極小の鉤爪は脅威のくっつきを実現する。
指にくっついて、反対の手で外そうとしたら、そちらの指までくっついて詰む、というほどなので、もしこの果実を見かけても不用意に触れてはならない。

さて、ライオンゴロシはくっつき虫よろしく、通りかかった野生動物――例えばライオンなど――にくっついて運搬されることで種子散布を図る植物である。

参考文献

しかし、そのあまりに硬く鋭いトゲは、時として野生動物の足を深く傷つける。なんとか口でトゲを抜こうとすれば、不幸なことに口にまで刺さってしまうことがある。
そして傷口から粘膜が化膿して激痛を訴え、しまいにはものを食うことも、水を飲むことすらもできず、哀れなライオンは死んでゆくのである。
やがてライオンゴロシの実からこぼれ落ちた種は、ライオンの死体を養分として、新たなライオンゴロシを大地に芽生えさせるのだ。
そして荒野を這いずるように枝葉を茂らせ、ライオンゴロシは待ちわびている。次の犠牲者がその上を通りかかるのを――
…などと言われているが、この噂の信憑性についてはかなり疑問が残り、単なる都市伝説であるという可能性が高い。

実際、野生動物がライオンゴロシの実によって怪我を負うということは確かにあるらしいので、運が悪ければそこから感染症などで死ぬということもありえるだろうが、
だからと言って、ライオンゴロシがそのような偶然を前提とした繁殖方法をとっているというのは、いささか眉唾な話ではないだろうか。

偶然こうした事態があったのだとしても、基本的にはごく普通にこぼれ種でも増えることができると考えたほうが良いだろう。

でなければ、極めて限定的な繁殖方法をとるライオンゴロシは、とうの昔に自然淘汰の波に飲まれてしまっていたはずである。
それにしても、ライオンを殺して養分にする植物とは、都市伝説としては中々悪くないB級ホラー感があるので、話のタネにはなるかもしれない。

このライオンゴロシの一度見たら忘れられない果実は、インテリアとしても地味ながら根強い人気があるらしく、日本国内でも標本を入手できる。ジャム屋さんとかで。
もちろん下手に触ると怪我しかねないので、取り扱いには細心の注意が必要だが、ライオンゴロシが気になって仕方ない団長は一度手にとってみるのもよいだろう。
尚、果実なので中には当然種子があるはずだが、今のところライオンゴロシの日本国内における栽培についてはほとんど情報がなく、栽培方法などは不明である。
アフリカの乾燥地帯の植物なので、気候条件が大きく異なる日本での栽培難度は相当高いと思われる。魅力的な植物ではあるが、余程の自信と設備がない限りは手を出さないのが無難であろう。
また、ライオンゴロシには薬用植物としての意外な一面もある。原産地では塊茎が古くから民間薬に利用されており、最近では西洋医学の世界でも研究が進められている。
リューマチや関節痛のほか、消化促進などに効果があるとされ、グルコサミンやコンドロイチンなどを含むサプリメントに配合されていることもある。