ラリラリラリラ しらべはアマリリス
アマリリスは世を忍ぶ仮の名前・・・彼女の真の名は、ヒッペアストラム。これはギリシャ語で「騎士の星」を意味する。
そう、英名では"Knight's Star Lily"とも呼ばれる彼女は花騎士ではなく、 星 騎 士 だったのだ!
進化後の衣装や武器にそこはかとないスペオペ臭を感じるのは、彼女が真の力に目覚めたからに違いない。
・・・本当のところを言うと、業界ではものすごく面倒くさいことが起こっている。
結論から言うと、アマリリスと呼ばれている植物は、アマリリスではない。な・・・何を言ってるのかわからねーと思うが・・・
かつてはアマリリスは、それはもう当然のようにアマリリス属に属していた。
これは分類学の父たるカール・フォン・リンネによる分類で、アマリリス・ベラドンナという種を中心に、他8種が同属に含まれていた。
しかし、この中には南アメリカ原産種と南アフリカ原産種が混在していたため、のちの時代の混乱を招くこととなる。
19世紀になって分類が進むと、アマリリス属は50種以上の多型な種から成る分類となり、ひとつの属とは言えなくなってきた。
分類の再編が検討され、1821年、イギリスのウィリアム・ハーバート=サンはこれらを新設した幾つかの属に細分化した。
この時、アマリリスの名前で多く出回っていた南米原産種のほとんどは、新たにヒッペアストラム属に分離されてしまった。
一方で本来のアマリリス属には、南アフリカ原産のアマリリス・ベラドンナを含む3種のみが残り、以後増えたり減ったりして今は2種のみになっている。
しかし一般のお花フリークには分類学上の定義なんざ関係無いので、そのままアマリリスの名前で通して現在に至るという話。
とは言え面倒なことは面倒なので、本当のアマリリスとアマリリスじゃないアマリリスを区別するために、
本当のアマリリスのことをベラドンナリリーとか、ホンアマリリスとかいう名前で呼ぶことにした。
ベラドンナリリーという名前もまたややこしい。確かにユリに似ているが、分類はユリ科ではなくヒガンバナ科である。
ベラドンナというのはイタリア語で「美しい女性」の意味だが、また面倒なことにナス科にベラドンナという植物がある。
また、アマリリスじゃない方のアマリリスの園芸品種に「ベラドンナアマリリス」という名前ものまであり、ややこしいことこの上ない。
いっそ分類を再編したり、名前を付け直したりした方が良い気もするが、植物学者の怠慢大人の事情によりそうもいかないらしい。
さらにどうでも良いが、イギリスの貴族にウィリアム・ハーバートという人物がいるが、上記の植物学者とは別人。こんなところまでややこしい。
ややこしいことこの上ないので、以下に簡単に表にまとめてみた。
一般名称 | 学名 | 分類 | アマリリスなのか? | アマリリス | Hippeastrum × hybridrum | ヒガンバナ科ヒッペアストラム属 | 昔はアマリリスだった | ホンアマリリス ベラドンナリリー | Amaryllis Belladonna | ヒガンバナ科アマリリス属 | 正真正銘のアマリリスだが ベラドンナでもユリでもない | ベラドンナアマリリス | Hippeastrum "Belladonna" | ヒガンバナ科ヒッペアストラム属 | アマリリスでもベラドンナでもない | ベラドンナ | Atropa Bella-donna | ナス科オオカミナスビ属 | アマリリスとは関係ない |
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