橘は 実さえ花さえその葉さえ 枝に霜降れど いや常葉の樹 万葉集
日本固有種のミカン科の常緑樹で、静岡県から九州地域の太平洋沿岸地域にまれに自生する。
古来から日本に自生していた唯一の柑橘類(橘=ニッポンタチバナ)だが、実は黄色で酸味が強く、食用には向かない。
万葉の当時も常緑という性質から「永遠」の象徴とされて、花や青々とした枝葉の鑑賞に関心が向けられていたようである。
(日本人が柑橘を食用にし始めたのは、中国からミカンが伝わって日本でも栽培されるようになった江戸時代以降のこと)
「源平藤橘」と言われる日本の代表的な本姓(氏・うじ)四姓の1つにもその名が取られているが、
その橘氏は、奈良時代に県犬養三千代という女官が『先帝から仕えていた功績』を称えられて、
元明天皇が当時お気に入りだった橘の花(平安京・紫宸殿の「右近橘」)にちなんだ「橘宿禰(たちばなのすくね)」の氏姓を下賜したのが始まりである。
(ちなみに元明天皇も女性天皇で、二人は別にアヤシイ関係ではない。多分)
なお、四大姓とは言うものの橘氏は平安時代には既に没落していて、公卿の地位も失ってしまったため
その後の歴史上でもあまり有名な人物は輩出しておらず、氏族としてはマイナーな存在となってしまっている。
橘の花は家紋としても人気が高く、橘氏流の各家が橘紋を使用していたほか、他氏でも橘紋を使っている家は多い。
橘紋の代表的な武家に彦根藩の井伊氏があるが、井伊氏も本姓は藤原氏と言われており橘氏の一族ではない。
また文化勲章の意匠も橘花だが、これは昭和天皇の意向で、元々は桜が意匠案の候補だったものを
『桜は昔から武を表す意味によく使われているから、文の方面の勲績を称えるには橘を用いてはどうか』
ということで変更されたそうである。(宮内庁記者会OBの井原頼明氏の著書より)
古事記にも記述があり、また万葉集にも数多くの歌が詠まれているほど日本人に馴染み深かった橘だが、
現在では非常に数を減らしており、レッドリストでも絶滅危惧IA類に指定されている。
ちなみに、橘花とは日本海軍が開発していた、日本初の純国産ジェット飛行機の名前でもあるが
こちらは試作機が完成した段階で終戦を迎えてしまい、実戦に投入されることなく終わってしまった。
※特攻機を示す「花」の名は冠しているが、こちらは桜花とは違って体当たり攻撃機ではなく、
開発費の捻出を渋る軍部を説得する方便として、名目だけは特攻機として開発の許可を貰ったためとのこと。
なお、ゲーム内での図鑑では「クサトベラ科」となっているが、クサトベラ科は熱帯植物であり、
日本では南西諸島や小笠原で見られるのみである。。
タチバナは紛れも無く柑橘類、つまりミカン科の植物であってクサトベラ科ではありえないので
明らかに運営側の誤植と思われる。
誤った知識をユーザーに広めてしまわないためにも、ぜひ早急な修正を運営側に望みたい。
(※2015/5/1修正にて、無事『ミカン科』に修正。)
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