また遭える、きっと…
カトレアは中南米を原産とするラン科の属名であり、園芸業界では更に幾つかの近縁属やそれらとの属間雑種をまとめてカトレアと呼んでいる。
表記はカトレアだったりカトレヤだったりする。綴りが"Cattleya"なので、どちらかと言うとカトレヤの方が近い気もするが、そんなことは誰も気にしない。
いわゆる洋ランの一種に数えられるが、大輪の派手な花はその中でも人気、知名度ともに随一であり、「洋ランの女王」の栄えある異名を持つ。
更に女王カトレアを筆頭にパフィオペディルム、デンドロビウム、シンビジュームの4属を合わせて四大洋ランと呼ぶ。
「パフィオペディルムさんは未実装のようですね・・・」
「ふふふ・・・でも、あの子は四大洋ランの中でも最もマイナー・・・」
「ふん、イオノシジウムに先を越されるなんて、洋ランの面汚しね・・・」
恐らくパフィオペディルムもそう遠くないうちに実装されることだろう、レア度★5以上でな。その時までお財布握りしめて待っていよう。
と言ってから2年が過ぎた。
カトレアは19世紀初めに、思いがけぬ偶然により発見されたと言われている。
ブラジルで採取した植物標本をイギリスへと送る際に、この植物の根か茎か何かが、それとは知られずに荷物の梱包材に使われていたというのだ。
1818年、その荷物を受け取ったのは、バーネットで花の栽培と貿易を営んでいたウィリアム・カトレイさん。
こいつはどうもランらしいと思った彼が、なんとなくこの梱包材を植えて育ててみること3年、なんと見たこともない美しい大輪の花を咲かせたのである。
1824年、この花はイギリスの著名な植物学者ジョン・リンドリーにより、奇しくも世界で初めて栽培に成功したカトレイさんの名にちなみ「カトレア」と 名付けられると、それまで南米の森林でひっそりと咲いていたカトレアは、その美しさで世界中の注目を集め始めることとなる。
ひとくちにカトレアといっても膨大な品種が存在し、その姿は文字通り千差万別である。
カトレアは19世紀の発見以降、現在に至るまで栽培と交配、そして新種の発見が盛んに行われてきた。
現在までにカトレア属の原種は40種ほど発見されており、それら原種カトレア同士の交配はもちろんのこと、
カトレア属と近縁なレリア属、ブラッサボラ属、ソフロニティス属との属間交配もよく行われている。
カトレアに限らず、ランは属間交配種でも稔性、すなわち有性生殖を行い種子を結実する能力を保つことができるものが多いため、
単純な2属間雑種のみならず、3属、4属に渡っての複雑な交配が行われることもあり、その結果生み出される品種は膨大なものとなる。
また同じ親を持つ品種でも様々な個体差が現れることがあり、特に観賞価値の高いものはユニークな個体名を与えられ、 クローニングされて流通している。
混沌の坩堝と化したカトレア属には、過去にも何度か再編成のメスが入れられており、つい最近でもDNAによる新たな分類が行われたが、 そんなことは誰も気にしない。
植物学者達の苦労は顧みられず、業界では普通にあれもこれもまとめてカトレアと呼んでいるのが現状である。だってそのほうが分かりやすいし。
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