モケ のバックアップ(No.7)

世間には拙を守ると云ふ人がある。此人が来世に生れ変ると屹度木瓜になる。余も木瓜になりたい。

モケ(木瓜)はバラ科ボケ属の落葉低木。つまりボケのことである。
標準和名でもあるボケではなく、モケという一般的でない呼称にした理由はあえて言うまい。クズの実装楽しみですね。
元々は「モケ」だったのが転訛して「ボケ」になったとも言われているが、語源には諸説ある模様。
ボケ属にはボケ(Chaenomeles speciosa)のほか、クサボケ(C. japonica)、マボケ(C. cathayensis)の全３種があり、これらの交配種まで含めてボケと呼ばれることが多い。
日本に自生しているのはクサボケのみで、他は中国、朝鮮半島を原産とする。
分類上はカリン、リンゴ、マルメロなどと近縁であり、「木瓜」という字はカリンを指す場合もある。この場合の読みは「ボケ」ではなく「もっか」となる。
更に中国語では「木瓜」はパパイヤのことを指すが、パパイヤはパパイヤ科なのでボケやカリンなどとの関係性は薄い。

3-4月頃（遅咲き種では11-12月頃）、ウメに似た５弁花を咲かせる。花の色には白、ピンク、紅、絞りなどがあり、一つの枝に色違いの花をつけることもある。
いずれの原種も東アジア原産というだけあって、日本の気候にもよく馴染む、育てやすい木である。観賞用として庭木のほか、生け垣、盆栽などにも仕立てられる。
瓜型と言えなくもない果実（厳密には花托が肥大した偽果）は、熟すと黄色くなり、カリンとよく似ている。
果肉は硬く、酸味と渋みが強いため生食には適さないが、香りは良く、果実酒やジャムなどに利用できる。
カリンやボケの果実を乾燥させたものは、木瓜（もっか）と呼ばれる生薬となり、鎮咳、去痰、鎮痛、抗痙攣、利尿などの効能がある。

日本には在来種のクサボケが自生していたほか、平安時代に中国からボケが輸入されていたが、
園芸植物としてはツツジやツバキなどに遅れを取ったためか、やや地味な扱いを受けていた。
長らく細々と育てられ続けていたボケだが、大正時代に突如、新潟県新潟市と埼玉県川口市に妙にピンポイントなボケブームが到来する。
現在でも人気の高い「東洋錦」「日月星（じつげつせい）」などの品種は、この頃作出された。
このブームは20年ほどで終息したが、戦後、昭和40年頃に第二次ボケブームが勃発。以来現在に至るまで200を超える品種が作出され、花木の定番と言えるまでになっている。

木瓜紋（もっこうもん）は家紋にもよく使われる紋様で、藤紋、片喰紋、鷹の羽紋、桐紋と合わせて五大紋と呼ばれる。
木瓜紋はその起源が謎に満ちた、不思議な紋である。文字通りボケの花の図案化とも言われるし、瓜の断面とか、鳥の巣などという説もある。
ボケの花言葉の中に「先駆者」「指導者」とあるのは、かの織田信長の家紋が「五つ木瓜」であったことに由来するとも言われている。