ルドベキア のバックアップ(No.56)

思はざるほかに、鬼の、人の骨を取り集め侍りて人に作りなすやうに、信ずべき人のおろおろ語り侍りしかば、そのままにして、
広野に出でて、骨をあみ連ねて造りて侍れば、人の姿には似侍りしかども、色も悪く、すべて心もなく侍りき。

ルドベキア(Rudbeckia)はキク科オオハンゴンソウ属の一年草または多年草。
北アメリカ原産で、15種ほどが所属している。
属名は「分類学の父」と呼ばれるカール・リンネによって、彼の師であるオロフ・ルドベックに因んで命名された。
キク科植物に特有の、多数の花が集まって一つの花形をなす「頭状花序」が特徴で、真ん中の丸くなっている黒い部分を「筒状花」、外側の黄色い花びらのように見える部分を「舌状花」と呼ぶ。
園芸においては、アラゲハンゴンソウ(Rudbeckia hirta)の矮性品種「グロリオサデージー」などがよく栽培され、強健で増やしやすい種として人気がある。

ルドベキアの一種であるオオハンゴンソウ(R. laciniata)は、日本では特定外来生物（第二次指定種）に登録されており、
「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」（通称「外来生物法」）により、輸入、栽培、保管、運搬、放出、譲渡等が禁止されている。
また、R. hirta等の他のオオハンゴンソウ属の植物は、特定外来生物でこそないが、輸入の際には種類名証明書の添付が義務付けられている。
こちらは栽培等まで禁止されているわけではないので、ルドベキアを育てている・これから育ててみようと思っている団長はご安心を。

オオハンゴンソウは明治中期に観賞用として導入された種で、現在では日本各地に帰化しており、特に湿原を好んで分布する。
日光の戦場ヶ原のような国立公園にも侵入しており、在来種への影響が懸念されている。
地域によっては年数回の大規模な駆除作戦が実行されてはいるが、「2.6gという僅かな根茎の欠片からでも再生する」
「一度に1600個もの種子を作る」「しかも土壌中で長期間発芽能力を維持する（埋土種子）」などの性質から、根絶は極めて困難とされている。
それどころか、戦場ヶ原で行われた駆除作戦においては、草抜き作業等で湿原が著しく撹乱され、
あとに残った荒れ地には強健なオオハンゴンソウばかり…という最悪の結果を招いてしまった。
それだけ聞くと迷惑な話でしかないが、あるいは「惨劇からひとり生き残った少女」という設定は、そんな荒れ地に咲く姿を映したものなのかもしれない。

オオハンゴンソウ、およびハンゴンソウの「ハンゴン」は「反魂」と書き、死者の魂を呼び戻す術を意味する。
平安の歌人、西行法師が高野山にてこの秘術を試みるも失敗した、という伝説は有名で、ご存知の団長も多いだろう。
この曰く有りげな名前の由来には謎が多い。垂れ下がった深い切れ込みのある葉が、手招きする幽霊のように見えるから、と説明されることが多いが、詳細は不明である。
ルドベキアと監獄島を襲った悲劇を思うと…色々と考えさせられる名前ではなかろうか。

よく似ているキク科キオン属のハンゴンソウ(Senecio cannabifolius)は日本在来種であり、美味しく食べられる山菜としても知られている。
オオハンゴンソウは一般には食用とされないものの、食べてみた人によると案外悪くないそうである。どうせ駆除するのなら食べてしまうのも良いかもしれない。