もくせいのにおいが
庭いっぱい
表の風が、
ご門のとこで、
はいろか、やめよか、
相談してた。
(金子みすゞ「もくせい」)
モクセイ科モクセイ属の常緑樹。秋に名前通り黄金色、というよりは橙色の小さな十文字型の花をぶわぶわと無数に咲かせる。
何と言っても甘く強い香りが特徴であり、庭木に植えている家があれば、秋になれば塀の外側からでもその匂いが分かるだろう。
ギンモクセイというお姉ちゃんがいる。単にモクセイと言った場合、大体はこっちのお姉ちゃんのことである。
ご想像の通り花は白色。キンモクセイほど香りは強くなく、花の数も少ないので、控えめな印象のお姉ちゃんである。
金と銀がいるんだから、ドウモクセイだってもちろんいる、いなきゃおかしい、と思うのが人の性だが、いないのである。
どうしても納得できないという団長は、モクセイの新種を見つけてきてドウモクセイと名前をつけてあげて下さい。
代わりというわけではないが、ウスギモクセイやシロモクセイなど、姉妹は結構多い。
キンモクセイを含め、これらはすべてギンモクセイお姉ちゃんの変種、または品種と見なされている。
ちょっと意外なことに、トゲトゲした葉っぱのヒイラギちゃんとは割と近縁だったりする。
分類上は同属で別種なので、コスモスとチョコモスの例に倣うならば、従姉妹ということになる。
ギンモクセイお姉ちゃんとヒイラギちゃんが交雑(意味深)したヒイラギモクセイという子がいる。従姉妹同士だから無問題ですね?
ちなみに、原産国は中国であり、日本には江戸時代に輸入されてきた。
キンモクセイは雌雄異株、つまりひとつの花にめしべとおしべがあるのではなく、
雌花のみを咲かせる雌株と、雄花のみを咲かせる雄株が別々に存在している。
江戸時代に日本に輸入されたキンモクセイはすべて、花の香りが強い雄株であった。
つまり、現在日本国内に存在するキンモクセイはすべて、オスである。だからどうというわけではないが
ふと漂うキンモクセイの香りに秋の深まりを感じたとしても、それはオスの香りである。だからどうというわけではないが。
キンモクセイの花はお茶にしたり、白ワインに漬けて桂花陳酒というリキュールを作ったり、
料理や菓子の香りつけに使ったりと、その芳香が様々な形で古くから利用されている。
特に日本では、主にトイレのかおr(グチャ
・・・というのも、もともとトイレといえば汲み取り式が普通だった時代、その悪臭をごまかすためにキンモクセイを庭に植えていたのが始まり。
手入れも比較的簡単で、はっきりと強い香りを放つキンモクセイは、一般家庭での臭い消しにはうってつけだったのである。
その名残で、キンモクセイの香りは芳香剤の定番として、市井の根強い人気を集めていたのである。
しかし最近では消臭剤が進化し、においの原因物質を化学的に除去することができるようになってきた。
キンモクセイ=芳香剤の図式が定着しすぎてしまっていたこともあり、90年代を境に芳香剤の世代交代が始まる。
平成の世では、より軽いフローラルな香りが好まれるようになった。そう、ラベンダーである。
そのため、平成生まれの若い人たちの間では、トイレの香りといったらキンモクセイよりラベンダーであることも多い。
しかし、そのラベンダーもまたキンモクセイと同様に、世代交代の時を迎えようとしているのだという。
さて、これからの時代を担うであろう団長諸兄のご子息達は、一体どんな香りのするトイレで育つのだろうか?
キンモクセイとペットのカエルくんとの関係は、謎である。
水辺に生息していると思われがちなカエルだが、繁殖期にしか水辺に現れないという種は意外と多い。
ヒキガエルやツノガエルの仲間は地表性種、そしてアマガエルやアオガエルの仲間は樹上性種である。
いつも水辺に潜んでいるのはトノサマガエルやアカガエルの仲間である。ほとんど一生を水中で過ごす種もいるが稀である。
樹上性のカエルは普段は木の枝葉や草の上に留まっている。アオガエルの仲間は産卵すら樹上で行う徹底ぶりである。
もちろん彼らがキンモクセイを住処にすることもありえるので、カエルくんはそれらの一種である可能性が高い。
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