しなる指に赤花を
南国に咲く花、ハイビスカス。灼熱の太陽の下で鮮やかに輝く、美しく大きな花が特徴である。
南国のモチーフとしてよく用いられ、旅行会社のCMやパンフレットなどで南の島とともに描かれている姿や、
南国をイメージした雑貨や服飾品などにも、ハイビスカスの意匠を見ることができる。
紅生姜さんレッドジンジャーもまた南国を彩る花。彼女たちの関係は、同郷の先輩といったところだろうか。
名前の由来は「エジブトの美の女神ヒビスに由来する」という説が流れているが、古代エジプトにヒビスという神は存在せず、信憑性は低い。
「ヒビス神殿」というアケメネス朝時代の遺跡があるため、ここから誤解が広まったものと考えられる。
尚、ヒビス神殿は太陽神アモンを祀る神殿であり、ヒビスはエジプト語で「鋤」を意味する。ハイビスカスとの関連性は見出し難い。
ウスベニタチアオイの古ギリシャ語名"ἱβίσκος (hibiskos)"に由来するという説が有力だが、詳細は不明である。
ハイビスカスの仲間のローゼルという植物はハーブティーの原料となり、ハイビスカスティーと呼ばれる。
濃いルビーレッドの水色とかなり強い酸味が特徴で、ビタミンやミネラル、有機酸を豊富に含んでいる。
風味や成分などローズヒップと相性がよく、市販のローズヒップティーにはローゼルがブレンドされていることも多い。
新陳代謝が高まるので、お酒や煙草が好きな団長や、連日の執務で疲れ気味の団長は、ハイビスカスちゃんに元気を分けてもらおう。
梅干しに似た味でかなーり酸っぱいが、蜂蜜などで甘みを加えると飲みやすくなるのでオススメ。
ハイビスカスとは、分類学的に言えばアオイ科フヨウ属というグループの英名及び学名"Hibiscus"のことである。
野生種のみでもおよそ250種から成るこの属は、ムクゲやケナフなどの植物を含むが、
園芸業界においてそれら全てをハイビスカスと言うことは、まずほとんど無いと言っていい。
先述したローゼルという植物も、その意味ではあまりハイビスカスとは呼ばれていない。
業界で言うハイビスカスとは、これらフヨウ属のうち「ブッソウゲ」などを中心とした数種、及びそれらの変種や園芸品種などの通称である。
そもそもの定義が曖昧な上、正確な出自が不明な種も多く、何かと混沌としているのがハイビスカスという花である。
原種の「ブッソウゲ」にしても、野生種が見つかっておらず原産地不明。実はなんかの雑種なんじゃないかとも噂されている。
ハイビスカスと呼ばれる園芸用作物は8000種を超えるとも言われ、その形態は多種多様である。
一般には、夏に大きな5枚の花弁と、長く伸びた雌しべを持つ花を咲かせる熱帯性低木、と認識されていると思われる。
日本国内では、南国の花のイメージ通り、沖縄県などで庭木として多く植えられているが、
本州でも人気の高い園芸植物であり、一般家庭の庭先で育てられているのを目にすることも割と多い。
冬場の寒さは流石に厳しいものの、それ以外の季節なら本州の気候でも元気よく育ち、綺麗な花を咲かせてくれる。
ハイビスカスの原種のひとつ「ブッソウゲ」だが、「仏桑花」や「扶桑花」と書き、なにやら只ならぬ気配を感じさせる。
もともとこの花は漢名で「扶桑」と呼ばれていた。これが「扶桑花」の形でローカライズされ、さらに「仏桑花」に変化したとされる。
扶桑とは何なのかというと、日本独自の設計による初の超弩級戦艦、扶桑型戦艦の中国の神話に登場する巨樹である。
「山海經」や「淮南子」では、遙か東の海の果てにその巨樹は立ち、太陽はそこから昇ると記されている。
それがいつからか、扶桑とは中国の東、海を挟んで位置する「日出処」こと日本の尊称や詩的表現になったという。
つまりハイビスカスちゃんは扶桑花=日本の花・・・ハイビスカスちゃんは日本の国花だった・・・!?
沖縄ではアカバナー、グソーバナ(八重山だとグショークヌパナ)と呼ばれる。
グソーバナは後生花と書き、死者の来世(後生)での幸福を願って墓地に植える風習がある。
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