マメ科ネムノキ亜科アカシア属の総称で、熱帯から温帯にかけて多くの種が分布しており、
特にオーストラリア大陸やアフリカ大陸に非常に数多くがみられる。
主な種に「フサアカシア」や「ギンヨウ(銀葉)アカシア」などがある。
「ミモザ」の別名でも知られるが、呼び方には様々な事情から混乱がみられ、複雑な状況である。
欧州、特にフランスではミモザというと前述のフサアカシアを指すが、
日本ではギンヨウアカシアの別名を「ミモザアカシア」としており、文脈から判断しないと間違いやすい。
※フサアカシアの方が寒さに弱く高木になるので、日本では寒さに強く手入れしやすいギンヨウアカシアを植えることが多い、という事情もある。
このフサアカシアはオーストラリア原産で、ヨーロッパ人がオーストラリア大陸を「発見」した大航海時代の頃に
現地からヨーロッパに持ち帰られたものが各地で栽培され、やがて欧州中に広まったと見られている。
ただし、元々の「ミモザ」という言葉は同じマメ科の「オジギソウ」のことを指している。
(葉に触れると閉じて下向きに垂れ下がる動きが、古代ギリシアの身振り劇『ミモス』のようだということから付いた名前)
そこから時代が下り、オジギソウに似た葉の植物の総称となり、やがてアカシアのことを指すようになったわけである。
現代では「ミモザエッグ」と言えば炒り玉子をアカシアの花に見立てたフランスの庶民料理だったり、
カクテルの「ミモザ」と言えばシャンパンとオレンジジュースを混ぜたもの(アカシアの色からの連想)だったりと、
普通にmimosaと言った場合、ピンク色の花をつけるオジギソウのイメージよりもアカシアの黄色のイメージの方が強いようである。
さらに日本では、明治初期にハリエンジュが初めて輸入された時に、その木が「アカシア」と紹介されていたため
ハリエンジュの方がアカシアという名の植物として広まってしまったという経緯もあって、なおさら状況は複雑である。
(※詳しくはハリエンジュのページを参照のこと)
ハリエンジュはマメ科ハリエンジュ属で、花も白く、幹にトゲが多くて明らかに別種の木なのだが
上記の経緯から、今でも日本ではアカシアと混同されることが多い。
本来のアカシア(アカシア属の仲間たち)が日本に入ってきたのは明治の終わりごろのことで、
それでは区別が付かなくて困るということで、ハリエンジュの方は学名 pseudoacacia を直訳して
「ニセアカシア」と呼ぶこととされ、更にアカシアと混同しにくいようにハリエンジュという別名も付けられたのだが、
一度広まってしまった名前はなかなか置き換わらず、21世紀の今でも混同されている例は多い。
※「アカシア蜂蜜」を採取する蜜源も、北原白秋の「この道」に出てくる「あかしやの花」も、札幌のアカシア並木も
松任谷由実やレミオロメンの「アカシア」も、実は全てニセアカシア(ハリエンジュ)のことである。
つまり、日本で言われる「アカシア」は実は「ニセアカシア」のことで、「ミモザ」と言われるのが本来のアカシアで、
しかし「ミモザ」というのは本来は「オジギソウ」のことなのである。非常にややこしい。
昔からずっとハリエンジュ(ニセアカシア)と間違えられて人々に認識されてきた、という経緯が
ゲーム内での飄々とした性格や、いつも実務はハリエンジュに任せて自分はどこかにフラッと行ってしまう、
というような行動にもつながっているのだろうか。
旧約聖書に記されている「契約の箱」(「アーク」「聖櫃」ともいう)は
神の指示により「アカシア材で作らねばならない」とされている。
これは十戒が刻まれた石版を納めた箱で、ユダヤの民にとっては秘宝中の秘宝とされるものだが
バビロニアによってエルサレムが攻め滅ぼされた際に、陥落前のソロモン神殿から持ち出され隠されたと言われており
その行方は「失われた聖櫃」として歴史上の大きな謎の1つとされ、映画「レイダース」の題材にもなっている。
この「聖櫃」、アカシア材で作られているとされているが、現在のパレスチナ周辺ではアカシアの木は見られない。
もちろん旧約聖書の時代にもこの地域にはなかったと思われるが、聖櫃が作られた当時、モーゼたち一行は
エジプト脱出後にシナイ地方の荒れ地を転々としていた頃で、その辺りにはサバンナ・アカシアが多く見られるので、
この当時に現地で入手しやすい材料を選んだものと思われる。
(硬くて腐りにくくシロアリにも耐性があるので、大事なものを入れておくのに丁度良いという面もあるが)
アフリカで多く見られる、このサバンナ・アカシアはキリンの主食でもある。
サバンナ・アカシアは草食動物から葉を守るために、木の高いところだけに葉を生やして
幹の下の方には枝がほとんどないのが特徴なのだが、キリンはこの木の葉を食べるために
首が非常に長く進化しているので、サバンナではキリンだけがアカシアの葉を食べ放題なのである。
しかしアカシアの方もただ食べられているだけではおらず、キリンに齧られたことに気づくと
空気中に揮発性物質を放出し、周りの仲間に「敵」がやって来たことを知らせるのである。
この揮発性物質を感じると、アカシアの木々は体表面にタンニン(お茶などに含まれる渋み成分)を一斉に分泌して
苦くて食べられないように体を変化させるのである。
こうなるとキリンも嫌がって別の餌を求めて移動していくので、葉が食い尽くされてしまうのを防いでいる、という仕組み。
飄々としながらも抜け目ないように見えるゲーム内の彼女の性格も、実はこんなところから来ているのかもしれない。
また、中央アメリカに分布するアカシアの種類には、アリと共生関係にあるものが知られているが
最近の研究でこの共生関係があまり対等なものではなく、実はアカシアが分泌する樹液には
他の糖分を摂取できないようにする作用があるため、一度アカシアの樹液を摂取してしまうと
一生離れられず、そのアリは死ぬまでアカシアの木を守り続けて働かされる羽目になる、という結果が報告されている。
アカシア隊の面々、特に一匹狼で花騎士嫌いのダリアまでを惹きつけて魅了してしまう彼女には、
魅力的な笑顔の裏にこんな秘密が隠されていたのである。
幸運にもアカシアをお迎えして歓喜する団長諸兄、実は既に彼女の魅力から逃れられなくなっていないだろうか?
お気をつけあれ。
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