夜の空に太陽を探しだすのはむづかしい。向日葵が戸惑つてゐるのも無理はない。
……しかし夜は長くない。いづれ朝が来る。向日葵は朝になればにつこりする。
キク科ヒマワリ属の一年草。天高く咲く黄色い大輪の花は「太陽の花」とも呼ばれ、夏の風物詩として親しまれている。
同時に、二十歳を過ぎた人間に強烈なノスタルジーを喚起させ、死に至らしめる非人道的生物兵器でもある。
ヒマワリが太陽の象徴というのは世界的な共通認識であるらしく、英語でヒマワリのことを"sunflower"と呼ぶほか、
学名の"Helianthus"も「太陽の花」を意味するラテン語である。他にも多くの原語で同様の表現が見られる。
原産地は北アメリカ西部とされ、古来よりインディアンとの関わりが深く、食用に栽培もされていた。
かのマンコ・カパックが治めたインカ帝国でも、太陽を連想させる花が太陽神信仰と結びついたためか、
ヒマワリは神聖な花として尊ばれ、国花にも指定された。なんたって可愛いからな、女神になるのも仕方がない。
一般にデカいと思われているヒマワリだが、原種はそれほど大きい花ではなく、背も低かったらしい。
現在の姿になったのは農業用や観賞用として品種改良されてきたためで、採油用品種は草丈3m,花径30cmになるものもある。
かと思えば、品種改良で大きくなったヒマワリを品種改良で小さくしたミニヒマワリとかいうよく分からないものもある。
16世紀、コロンブスによる「新大陸の発見」以降、ヒマワリはヨーロッパに渡り、
大陸各地へと伝播していった。日本にも中国を伝わって17世紀にやって来ました。
最も盛んに栽培されたのは、意外や意外、極寒の地ロシアであった。Ураааааааааааа!!
まるでイメージにそぐわないが、高緯度にあるロシアは夏の日照時間が長いため、
越冬しない一年草のヒマワリには、案外過ごしやすい土地なのかもしれない。
ロシア正教では受難週にあたる期間に禁食が行われ、油脂などの摂取を禁じられるのだが、
ヒマワリの種だけは何故かレギュレーション的に無問題だったらしく、皆でヒマワリの種をポリポリしていた。
その結果ロシアは食用ヒマワリ先進国となり、世界一のヒマワリ生産量を誇るヒマワリ大国になった。どんだけポリポリしたんだ。
今でもヒマワリはロシアの国花であり、ヒマワリの種はロシア人の大好物。Хорашо!
暇さえあればポリポリしている。日本人にとっての煎餅やおかきに近い感覚だろうか。
ヒマワリの種が好きなのは何も人間だけではない。
なにを隠そう、ひまわりの種といえばハムスター。
ハムスターだけに限らず、小動物や小鳥たちもヒマワリが大好物である。
無論、油脂分の多いひまわりの種だけをペットに与えるのは御法度。あくまでもおやつやご褒美として与える方が望ましい。
ヒマワリは芸術作品のモチーフとしても多く登場する。特に有名なのがヴィンセント・ファン・ゴッホの絵画だろう。
ゴッホもヒマワリを太陽の象徴としていたらしく、特に暖かな南フランスでの画家活動中に多くのヒマワリを描いている。
眩しいばかりの黄色で描かれたヒマワリからは、南フランスの暖かな夏が感じられるような、そうでもないような。
しかし、精神に異常をきたし精神病院に入院してからは、ヒマワリの絵は一切描いていない。
結局彼は二度とヒマワリを描くこと無く、自らの命を絶った。
――ちなみに、ヒマワリの品種には、名画のヒマワリをイメージしたシリーズが存在する。
「モネのひまわり」、「ゴーギャンのひまわり」、「マティスのひまわり」、
そして「ゴッホのひまわり」が、現在でも元気に黄色い花を咲かせている。
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